研究課題/領域番号 |
25440127
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野口 航 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80304004)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 強光ストレス / 呼吸鎖 / 代謝の相互作用 |
研究概要 |
葉が過剰な光エネルギーを受けると、葉緑体ストロマには過剰な還元力が蓄積される。その過剰還元力の一部はミトコンドリア呼吸鎖により散逸される可能性が示唆されており、そのときATP合成と共役しないalternative oxidase (AOX)が重要な役割を担うと考えられている。我々はシロイヌナズナのAOX1a欠失変異株(aox1a)を強光処理すると、野生型(WT)と比較して葉緑体のプラストキノンがより還元型となり、光化学系IIの下流に還元力が蓄積されることを明らかにしている。 本研究ではストロマに還元力が蓄積する光化学系変異株pgr5、およびpgr5とaox1aの二重変異株(aox1a/pgr5)を用いて、強光下で栽培した。aox1a/pgr5では生育遅延が観察されたため、詳細な成長解析を行った。WTおよびpgr5と比べ、aox1a/pgr5では生育初期に相対成長速度が低下し、純同化率(NAR)も下がった。NARは光合成系と呼吸系に影響されるため、強光下の生育初期の葉の光合成系と呼吸系の応答を詳細に調べた。WTおよびpgr5と比べてaox1a/pgr5の光化学系IIの量子収率、Fv’/Fm’およびqPが低下し、葉面積あたりの呼吸速度が上昇していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
aox1aとpgr5の二重変異株が、生育初期に遅延する現象を概ね明らかにすることができた。学会発表を行い、現在、論文投稿の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
定常光条件と通常光条件でシロイヌナズナを栽培し、バイパス経路などの呼吸鎖の発現を調べ、変動光条件ではどの経路が重要な役割を果たすかを明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初参加を予定していた海外の学会が開催がキャンセルされたために、計上していた旅費を使用しなかったこと、変動光条件での栽培実験およびキノン定量を26年度に行うことにしたために、その分の予算を26年度に使用したかったため。 26年度は、変動光下のaox1a 変異株でPSII の活性が大きく低下する要因を探る 変動光条件では、aox1a 変異株の強光下におけるPSII の活性が大幅に低下する。シロイヌナズナのWT とaox1a変異株を定常光と同様の条件で栽培し、その完全展開葉を暗黒条件下から、強光と弱光を2 分周期で変化させる変動光条件下に移し、光合成系を調べる。特にこれまでにWT とaox1a 変異株との差が大きかった電子伝達反応の過程に注目する。
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