研究課題
昨年度までの研究により、後生木部道管において局所的に活性化したROP11 GTPaseがスキャッフォールドタンパク質であるMIDD1を介してKinesin-13Aタンパク質を細胞膜にリクルートすること、このKinesin-13Aのタンパク質がATP依存的に表層微小管を脱重合することを明らかにしました。これまで植物体におけるkinesin-13Aの局在は不明でしたが、今回高感度のEM-CCDカメラと最新の共焦点ユニットを備えた顕微鏡をセットアップしてpKinesin-13A:GFP-Kinesin-13Aを観察したところ、局所的にROP11が活性化した壁孔に局在するところを捉えることに成功しました。興味深いことに、後生木部道管以外にも分裂組織においても発現が見られたことから、Kinesin-13Aは細胞分裂においても機能していると考えられます。一方、ROP11の活性化因子としてこれまでにROPGEF4を同定していますが、加えて他のROPGEFタンパク質も木部道管で顕著に発現していることを突き止めました。そのうちのいくつかのROPGEF遺伝子とROPGEF4を発現抑制したところ、壁孔の密度が著しく減少したことから、複数のROPGEF遺伝子が冗長的に働いている可能性が高いと考えられます。一方、ROP11の不活性化因子であるROPGAP3の過剰発現および発現抑制によっても壁孔の密度が変化したことから、ROPGEFおよびROPGAPが協調的に働くことにより、局所的なROP11の活性化の頻度を制御していると考えられます。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題ではROP GTPaseによる細胞骨格の制御を介して自己組織的な植物の形態形成機構を明らかにすることを目指しています。昨年度ではROP GTPaseの局所的な活性化を制御する仕組みに関して新知見が得られ、さらにその下流に於ける細胞骨格の制御機構に関しても新知見が得られています。新たな因子の同定にも成功している他、これらの遺伝子が木部道管以外においても機能していることが示されており、本研究課題の目標に向かって順調に進捗していると言えます。
今後は同定した新規の相互作用因子の機能を変異体およびin vitroの実験系を用いて解析を進めます。Kinesin-13AおよびMIDD1, ROPGEFの多重変異体を作出することにより、木部道管のみならず植物体においてもこれらの遺伝子の機能を明らかにします。高度なイメージング技術を駆使して木部道管内外でのこれらのタンパク質の挙動を明らかにします。
異動により実験の進行が遅れたため。
来年度は本来今年度使用予定であった消耗品を購入し、実験を進める予定です。
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