昨年度までの研究により、後生木部道管において局所的に活性化したROP11 GTPaseがスキャッフォールドタンパク質であるMIDD1を介してKinesin-13Aタンパク質を細胞膜にリクルートすること、このKinesin-13Aのタンパク質がATP依存的に表層微小管を脱重合することを培養細胞を用いて明らかにしました。本研究では植物体を用いて、これらの因子の挙動と機能を明らかにすることを目指しました。まずROP GTPaseが局所的に活性化する過程を明らかにするために、活性型ROP GTPaseのマーカーを木部道管に特異的なプロモーター下で発現させ、根の木部細胞のタイムラプスイメージングを行いました。その結果、二次細胞壁の沈着に先立って、細胞膜上にde novoに活性型ROP GTPaseのスポット状構造が作られることがわかりました。さらに、この活性型ROP GTPaseのスポット状構造は、壁孔を失うROPGEFの変異体では形成されないことが分かりました。これらの結果は植物体においてもROPGEFがde novoでの局所的なROP11の活性化を促進していることを示唆します。一方、MIDD1は二次細胞壁の沈着開始後に壁孔に局在していたことから、ROP GTPaseの局所的な活性化の後に機能していると考えられます。興味深いことに、MIDD1は木部細胞以外の細胞でも発現しており、木部道管細胞と同様に表層微小管に局在し、特に微小管の先端に顕著に蓄積している様子が観察されました。これらの結果から、木部道管以外でも微小管のダイナミクスの制御に関わっていると考えられます。
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