研究課題/領域番号 |
25440129
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
今村 壮輔 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (70548122)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 窒素代謝 / 紅藻 |
研究概要 |
窒素は、植物の生長を左右する重要な栄養素である。それ故、窒素量に応じた細胞の応答については、生理学的・分子生物学的な解析が盛んに行われている。一方、窒素量を細胞がどの様な機構で感知し、それに応じて応答するのか、つまり、窒素代謝の上流で機能する調節因子についての知見は、多くの制御系・実験系が複雑であるなどの理由から蓄積していない。本研究では、単純な制御系を持つと考えられる単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeを実験材料に用いて、窒素代謝の上流で機能する調節因子を同定し、機能解析をすることを目的としている。 本年度は、順遺伝学的手法により窒素代謝上流で機能する因子の同定法の確立をまず試みた。具体的には、窒素欠乏条件で誘導される転写因子に蛍光タンパク質を連結し、窒素充分条件でも蛍光を発する変異体を取得する方法である。まず始めに、蛍光タンパク質がシゾン細胞内で恒常的に発現する細胞と野生株を混合したサンプルを用いて、セルソーターで蛍光を発する細胞の分取が可能か否かを調べた。その結果、2種類の細胞を明確に区別することができたが、分取後の細胞は死滅しており、その後の培養をすることができなかった。分取時や分取後の条件検討を行ったが、結果は改善されず、その原因としてシゾンの弱い細胞壁が原因であると結論した。本方法による制御因子の同定は一時中断し、(1)窒素代謝上流で機能すると考えられるキナーゼの解析と(2)窒素欠乏条件で誘導される転写因子と協調的に機能する因子の同定を試みることにした。これまでに、当該キナーゼが窒素代謝上流で機能することを示唆する結果と、窒素代謝欠乏応答性転写因子の過剰発現株を取得している。今後は、それらの材料や知見を基盤とし、窒素代謝上流で機能する因子の同定と機能解析に繋げて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルソーターを用いた変異株の取得の実験系が不調に終わったため、当初計画していた実験に関しては現時点では達成されていない。そのため、この点では当初計画に比べてやや遅れている。 しかし、その後実験の方向性を修正し、窒素代謝の上流で機能する因子の探索を行った結果、窒素同化系の上流で機能すると考えられるキナーゼを同定している。更に、窒素同化系を制御する転写因子の過剰発現についても取得しており、今後の解析の基盤を整えることができているため、本研究の目的としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
セルソーターを用いた細胞の分取については、再度条件を検討する。 キナーゼの解析では、下流へのシグナル伝達経路や標的因子、窒素感知機構などを中心に解析を進めて行く。 窒素同化系を制御する転写因子の解析では、前述のキナーゼとの関係性や過剰発現株を用いてシグナルの上流から下流への経路について解析を進めて行く予定である。
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