研究課題
窒素は、植物の生長を左右する重要な栄養素である。それ故、窒素量に応じた細胞の応答については、生理学的・分子生物学的な解析が盛んに行われている。一方、窒素量を細胞がどの様な機構で感知し、それに応じて応答するのか、つまり、窒素代謝の上流で機能する調節因子についての知見は、多くの制御系・実験系が複雑であるなどの理由から蓄積していない。本研究では、単純な制御系を持つと考えられる単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeを実験材料に用いて、窒素代謝の上流で機能する調節因子を同定し、機能解析を行うことを目的に行った。申請者の先行研究により、MYB1と命名されたMYB型転写因子が、窒素欠乏に応じて機能することを明らかにしている。本研究において、MYB1の上流で機能する因子を探索した結果、TORキナーゼがMYB1の上流因子として機能していることを解明した。具体的には、TORの特異的な阻害剤であるラパマイシンによってTORの活性を阻害した条件下では、MYB1とその支配下の窒素同化遺伝子群の発現が、窒素充足条件であるにも拘らず誘導された。また、窒素欠乏とTOR阻害時の遺伝子発現パターンをDNAマイクロアレイ法にて網羅的に解析を行った結果、窒素欠乏時に変化する多くの遺伝子は、TOR阻害時に変動しないことが明らかになった。このことは、窒素欠乏時にTORが担うシグナル経路は、窒素欠乏時に機能している経路の一部を構成していることを示している。MYB1の下流因子については、新規に2個の遺伝子を同定することに成功してる。また、窒素代謝におけるTORの機能解明の情報を基にして、TORが脂質合成に関わることについても明らかにした。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件)
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