研究課題
原形質流動は植物の細胞内運動であるが,その分子機構については不明な点が多い.われわれは「小胞体運動が原形質流動の原動力である」という仮説のもとに,小胞体の運動メカニズムの研究を行ってきた.本課題では,小胞体運動において全く未解明である小胞体側の機構を明らかにすることを目的として解析を進めた.これまでに小胞体運動に異常を示す変異体を単離し,その原因因子が小胞体膜に局在して小胞体の膜融合を担うRHD3 (Root Hair Defective3) であることを明らかにした.本年度は,rhd3変異体における小胞体運動の詳細な観察から,細胞内全体で流動する典型的な小胞体運動は抑制されているものの,局所的に原形質流動に匹敵する速度で素早く運動する小胞体ドメインが存在することを見出した.このドメインをFluorescence Recovery after Photobleaching (FRAP) により解析したところ,褪色した蛍光シグナルが復活せず,ネットワークから物理的に切り離された小胞体断片であることがわかった.従って,rhd3変異体でも小胞体運動を担うアクチン・ミオシンの装置は維持されており,断片化した小胞体なら駆動することができるが,大きな小胞体ネットワークの流動性が低下していると考えられる.一方, RHD3相互作用タンパク質として同定した新規の小胞体膜タンパク質ファミリーの二重および三重変異体を確立して小胞体を観察したが,運動性には異常が認められなかった.メンバー間でアミノ酸配列の相同性が非常に高く,冗長性が高いことが考えられるため,今後全てのメンバーを欠損した変異体で解析を行い,小胞体運動性への関与を検証する必要がある.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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