研究課題/領域番号 |
25440134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石田 喬志 熊本大学, 自然科学研究科, 特任助教 (00462656)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植物 / 細胞・組織 / 蛋白質 / 発生・分化 |
研究概要 |
細胞分裂を制御する分子メカニズムは非常に複雑であるが厳密である。本研究では植物細胞の染色体分離制御に着目し、チェックポイントタンパク質に対するSUMO翻訳後修飾の関わりを解明し、詳細な分子機構を明らかとすることを目的に研究を行った。 本研究でチェックポイントタンパク質の一つとして着目したシロイヌナズナのオーロラキナーゼにはこれまで突然変異体の報告がされていない。そのため、artificial microRNAによるノックダウン系統を作製しており、複数の系統で生長の遅延と形態異常が観察されていた。本年度は今後の試験に用いるための系統選抜と2度の戻し交配を行った。確立された試験系統に関して、根の伸長度や花茎の高さなどを指標とした表現型の計測を行い、定量化した。 さらに、チェックポイントタンパク質のゲノム配列を用いて、artificial microRNAに対する非感受型変異を導入したコンストラクトを作製した。アグロバクテリウムによる形質転換法を用いてこのベクターをシロイヌナズナに導入し、ノックダウン系統と交配して相補実験を行った。その結果、交配系統が野生型様の表現型を示し、機能相補していることを確認した。さらに、このゲノム配列にSUMO-null変異を導入し、同様に相補試験を行った。現時点では交配後F1世代であり安定した系統確立には次世代の育成を要するが、ノックダウン系統様の表現型であることを確認している。このことは、チェックポイントタンパク質が正常に機能するためにはSUMOによる制御が必要であることを示している。 機能的なGFP融合タンパク質マーカーを作製するため、相補型ゲノム配列を用いてGFP融合タンパク質発現コンストラクトを作製し、シロイヌナズナに形質転換した。また、SUMO E3 ligaseであるHPY2との相互作用を検証するため、共免疫沈降実験に用いるベクターを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画とほぼ相違ないペースで相補実験が進んでいる。artificial microRNAによるノックダウン系統の作製と確立、相補コンストラクトによる機能検証は非常に時間がかかる実験であるが、事前の準備を含め滞りなく進んでいるものと評価している。今後、安定系統の確立と定量データの計測が見込まれる。 また、免疫沈降実験手法の会得や実験材料の準備も進めており、今後も当初計画通りにデータを取得できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度成果により、チェックポイントタンパク質の機能的なゲノム配列を決定することができた。さらに、この配列を用いて機能的なGFP融合コンストラクトの作製に取り組んでいる。今後、この系統が確立されたら、細胞内局在や動態の観察を行う計画である。これにより、SUMOがチェックポイントタンパク質に与える影響について検証する計画である。 また、シロイヌナズナの葉肉プロトプラストを用いた一過的な発現系によりHPY2とチェックポイントタンパク質とのphysical interactionを検証する計画である。実験手法は既に確立・会得しており、また、材料の準備もできているため、早期に結果を得られるものと見込んでいる。 顕微鏡観察手法や生化学実験・培養細胞を用いた実験手法など、現時点で順調に進んでいるものであっても今後何らかのアクシデントが生じた場合の対応策として共同研究者・研究協力者と適宜協議・議論を行い進めていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は研究機関の移動に伴い、実験機器や消耗品などの購入計画に変更が生じた。機器の設置スペースの確保が間に合わなかったものなどは、共用機器を利用したりするなどの対応を行った。同様に、いくつかのプラスチック消耗品や分子生物学実験キットなどでは購入手続きの変化などにより変更を行ったものが生じている。 実験機器や試薬・消耗品など本研究専用に使用することで研究の推進が図れるものに関しては、随時購入する。特に、本年度作出した形質転換植物体の生育と観察のため、次年度以降に試薬・プラスチック消耗品および植物育成用土を購入する。当初計画よりも多くの形質転換植物体を育てることにより研究の推進をはかることを検討しており、繰り越し分も含めて物品費に多くを割く計画である。また、成果発表のための学会出張旅費に供する予定である。
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