研究課題
基盤研究(C)
まずαチューブリンのリン酸化部位を決定するために、PHS1キナーゼ部位-GFPを発現誘導する植物を作出し、免疫沈降後ブタ脳チューブリンのリン酸化を確認し、質量分析(理研・中神博士と共同研究)によりThr349がリン酸化されることを明らかにした。さらに、リン酸化ミミック変異を導入したGFP-αチューブリン(T349D)がほとんど微小管に取り込まれないことを、mCherry-αチューブリンとの蛍光共局在解析により明らかにした。この結果はPHS1の活性の分子メカニズムを解く上で重要である。また、PHS1が引き起こす微小管脱重合の実体が、重合されにくいチューブリンであり、報告のある浸透圧刺激により微小管結合性が低下するMAP65-1のように微小管構造を不安定にする仕組みとまったく異なっており、この結果もPHS1の生理的な役割を追求する上で重要である。また、高浸透圧処理はABAシグナル伝達を活性化するが、ABA添加によりαチューブリンがリン酸化されないことも示した。以上まとめ、current biologyに受理され10月号に掲載された。高浸透圧処理で起こる微小管脱重合の役割に迫るための予備実験を行った。浸透圧処理のひとつ0.8Mマンニトールは、最終的に植物個体に致死性を与えるため、生育可能な濃度を検討した。0.4Mで処理すると、野生型の微小管は壊れた後、時間経過とともにやや束化した微小管配向が回復し、PHS1欠損変異体の微小管は壊れないものの、野生型同様やや束化した微小管配向に変化した。高浸透圧により、PHS1を介さす微小管配向に影響を与えるシグナルの存在が新たに予想された。さらに、浸透圧処理によりPHS1の自己リン酸化部位を確定するため、estradiolによるPHS1-GFP発現誘導植物を作出し、実験の条件検討に入った。
2: おおむね順調に進展している
当初申請した計画の順番とは異なり、二つの研究がほぼ並行に進んでいる。当然、一つ一つで考えると遅れ気味だが、総じて最終的な目標に向かい順調に進行している。また、PHS1を中心とした分子機構について大きな枠組みを今年度論文にまとめ、受理されたことは、最大の進展である。
PHS1タンパク質の活性化機構を考える上で、多くのリン酸化タンパク質と同様、自己リン酸化の仕組みを明らかにすることは非常に重要であると考えられる。現在、PHS1のリン酸化部位を決定するための実験が整いつつある。出来る限り、条件検討を早急に行い、PHS1のリン酸化部位の決定、さらに、高浸透圧刺激との関係を明らかにすることを推進していく。
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