研究課題
前年度までにPHS1がαチューブリンのリン酸化を行うこと、そしてその部位がThr349である事を明らかにした。このリン酸化部位は、微小管重合の際のαβチューブリンダイマー間のコンタクトサイトに当たり、重合を阻害する効果を持つ。また、PHS1を介したチューブリンリン酸化は高浸透圧により誘導する。今年度はPHS1が高浸透圧によって活性化される仕組みに特に注目した。これまでの結果によりキナーゼドメイン以外の部位がPHS1の活性を抑制すること、高浸透圧処理でPHS1自身もリン酸化することから、リン酸化によるPHS1の活性調節が予想された。PHS1にGFPを融合したPHS1-GFPを導入した植物に、高浸透圧処理後GFPで抽出してきたPHS1-GFPの質量分析を行い、リン酸化される残基を複数同定した(理研・中神博士との共同研究)。これら19箇所の候補セリン残基をアスパラギン酸に置換し、一過的発現系を用いて、植物細胞に導入し微小管脱重合アッセイを行ったが、活性化には影響はなかった。
3: やや遅れている
申請の計画どおりに、高浸透圧によってPHS1のリン酸化される部位は同定できた。変異を導入し微小管脱重合アッセイをおこなったものの、それらがPHS1の活性調節にどのような意味を持つのかまでは現在あきらかにできてはいない。また、本年度は長期の出張もかさなり、phs1変異体の詳細な表現型解析についてはほとんど進行できなかった。しかし、解析に必要な植物の作出については進行させる事はできた。
高浸透圧刺激によって迅速に細胞内カルシウムが上昇し、この上昇に関わるカルシウムチャネルが報告された。PHS1を介したチューブリン酸化も高浸透圧処理により比較的早くに起こる。この変異体とPHS1との遺伝学的関係や、チューブリンリン酸化に関与しているかを調べる。また、細胞内カルシウムの濃度をモニターできる蛍光タンパク質を用いて、高浸透圧、カルシウム、微小管の脱重合の相関性について調べる。今年度に明らかにされたリン酸化部位に対して、今度はPHS1の不活性化に関与していないかを調べる。
前年度、奈良先端科学技術大学院大学の研究大学強化促進事業により実施する若手研究者海外武者修行制を利用し、アメリカのカリフルニア大学デービス校にほぼ一年間ビジター研究者として出張した。BoLiu教授の研究室に所属し、植物微小管に関与する新規因子の解析、および、今後、私の研究において必須になると考えられるゲノム編集技術についての研究をおこなった。この出張は一昨年の後半に決定したものであり申請時にはわかってなかった。私が出張の間は、本研究に関わる大学院生によって本申請に関係する研究が進められたが、人員配分的に十分に遂行する事はできなかったために、多くの予算を次年度に繰り越す事になった。
前年度に充分に遂行できなかったPHS1の表現型の特長づけを本年度に行う。
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Nat. Plants
巻: 1 ページ: 15031
10.1038/nplants.2015.31