高浸透圧でPHS1が活性化され、αチューブリンをリン酸化し、微小管重合が阻害される。このとき、PHS1自身もリン酸化されるので、PHS1の活性がリン酸化で調節されている事が予想された。PHS1-GFPを導入した植物に、高浸透圧ストレスを与えて、GFPアフィニティー精製を行い、PHS1のリン酸化される部位を19か所同定し、PHS1の活性への影響を調べた。前年度、これら部位のアミノ酸をAspに置換し、一過的発現系を用いて微小管の重合活性を測定したが、どれも活性に影響がなかった。今年度、Asp置換を複数同時に持たせた物、また、Alaに置換し、同様のアッセイを行ったが、野生型と違いがなかった。 高浸透圧ストレスを受けると、植物細胞内のCa2+の速やかな上昇が検出され、高浸透圧依存的カルシウム透過チャネルOSCA1がこの分子実体である事が示されている。この変異体では、浸透圧ストレスに対してCa2+の上昇が抑えられる。予備的に、この変異体において、高浸透圧処理後αチューブリンのリン酸化をウエスタンブロッティングで経時的に調べると、変異体では野生型に比べわずかに早くαチューブリンのリン酸化反応が検出された、更なる検討が必要である。 今回、分裂期微小管に対する浸透圧ストレスへの影響と、PHS1の関与を調べた。細胞周期G2/M期にタンパク質蓄積がピークに至るCyclinB1の性質を利用し、D-boxを含むCyclinB1;1のN末端をGFP-α-tubulinと融合し、CyclinB1;1のプロモータで発現させる植物体を作出した。0.3Mソルビトール処理すると、恐らくM期チェックポイントの発動により野生型の染色体分離は著しい遅延を示すが、phs1変異体では耐性が見られた。以上の結果から、PHS1を介した高浸透圧ストレスの微小管の重合・脱重合調節が、分裂期微小管にも関与している事を強く示唆された。
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