研究課題/領域番号 |
25440136
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
奥島 葉子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (00432592)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 器官成長 / シロイヌナズナ / 脂肪酸 / 植物ホルモン |
研究実績の概要 |
私たちはこれまでに、表皮細胞層で合成される超長鎖脂肪酸が、内部細胞層におけるサイトカイニンの合成を抑制することにより細胞増殖の調節を行い、植物の器官成長を制御する機構が存在することを明らかにしてきた。本研究では、表皮細胞層が、内部細胞層の細胞増殖制御を介して植物全体の成長を調節する分子機構の解明を目的に以下の解析を行っている。 1) 超長鎖脂肪酸およびブラシノステロイド情報伝達系の相互作用の解析 前年度までに、表皮におけるブラシノステロイドの受容が超長鎖脂肪酸による器官成長の制御に必要であることを明らかにした。超長鎖脂肪酸の合成阻害剤であるカフェンストロールを処理した野生型植物や、超長鎖脂肪酸の含量が減少したpas2変異体では、ブラシノステロイドに応答して発現の上昇するいくつかの遺伝子の発現が誘導されていることを見出した。このことから、超長鎖脂肪酸はブラシノステロイドシグナルを抑制している可能性が考えられた。また、ブラシノステロイドに応答した遺伝子発現を制御する転写因子、BES1の機能獲得型変異体では、カフェンストロール処理による器官成長の促進に加え、サイトカイニン合成遺伝子の発現誘導も抑制されていた。これらの結果から、超長鎖脂肪酸が器官成長を制御する経路には、BES1が関わる可能性が示唆された。 2) 超長鎖脂肪酸シグナルによる器官成長を制御する新規因子の同定 前年度までに同定した、カフェンストロール処理しても器官成長が促進されない変異体5系統について、詳しい表現型の解析を行った。その結果、これら5系統の変異体はいずれもカフェンストロール処理を行っても、葉および茎頂における細胞増殖の活性化がおこらないことを確認した。さらに、マッピングにより、これら変異体の座上染色体の探索を行い、いくつかの変異体については責任変異が存在する領域を絞り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超長鎖脂肪酸がブラシノステロイドのシグナル伝達経路において作用する因子の候補を見つけることができた。また、超長鎖脂肪酸がサイトカイニン生合成を制御するまでの過程に変異を有する変異体を同定し、それらの原因遺伝子同定の準備を進めることができた。これらの結果は本研究の目的の達成に貢献すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 超長鎖脂肪酸およびブラシノステロイドの情報伝達の相互作用の解析 超長鎖脂肪酸の内生量の変化がブラシノステロイドのシグナル伝達に関わる因子の発現や局在に及ぼす影響を、BES1を中心に詳細に解析する。それにより、超長鎖脂肪酸がブラシノステロイドの情報伝達を制御する分子機構を明らかにしていく。 2)超長鎖脂肪酸シグナルによる器官成長を制御する新規因子の遺伝学的手法による同定 これまでに単離した変異体の原因遺伝子を同定し、それらの遺伝子が超長鎖脂肪酸シグナルが器官成長を制御する過程でどのような機能を果たすかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室に備蓄されていた消耗品を使用することができたため、消耗品費が予定より削減できた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で行う実験の遂行に必要な研究設備は所属機関および研究室に揃っているため、研究費の主な使途は試薬・酵素類、シャーレ等のプラスチックディスポザブル製品、培養土、ポットなどの消耗品となる予定である。
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