研究課題/領域番号 |
25440137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
本瀬 宏康 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70342863)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 維管束 / 木部分化 / 細胞間相互作用 / アラビノガラクタンタンパク質 / ポリアミン |
研究概要 |
Xylogenの作用機構・輸送機構の解析:XYP1-GFP, XYP2-GFPの輸送過程について共焦点顕微鏡により詳細に観察した。各種変異体における輸送を解析したところ、GPIアンカーが重要であることが示唆された。また、Brefeldin A などの輸送阻害剤による同調化、阻害剤洗浄による輸送再開の実験系を試みた。XYP1, XYP2の免疫沈降を行い、共沈するタンパク質について質量分析による同定を試みている。脂質などの低分子化合物については単離・同定が難しく、精製法や物質の同定法について検討を行っている。 サーモスペルミンとオーキシンの作用機構:サーモスペルミンにより発現が抑制され、サーモスペルミン欠損株で発現が増加する遺伝子を見出した。これらの遺伝子の多くは、オーキシンにより誘導される木部分化関連遺伝子であった。サーモスペルミンがこれらの遺伝子の発現を抑制することで、木部分化を負に制御していると考えられる。また、サーモスペルミンの合成阻害剤を作成し、この阻害剤が木部分化を促進することを明らかにした。 新奇シグナル分子の同定と機能解析:化合物ライブラリーから木部分化を顕著に抑制する化合物を見出した。この化合物は細胞周期の進行を抑制する効果があることから、細胞分裂が木部形成に不可欠であることが示唆された。また、維管束分化に関わる内生シグナル分子の単離と同定のための材料調整、精製と同定の条件検討など、準備を進めている。 効率的な維管束分化系の開発:サーモスペルミン合成阻害剤とオーキシンを同時添加することにより、木部分化を顕著に誘導できる実験系を開発した。この系が様々な植物に適応可能かどうか検討している。また、この実験系を用いて、維管束分化に関わる新規な因子の単離を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Xylogenの作用機構・輸送機構の解析:XYP1-GFP, XYP2-GFPを用いた輸送過程の解析により、一定の成果を上げる事ができた。GPIアンカーがxylogenの輸送に重要であることから、GPIアンカー型タンパク質が濃縮されている脂質ラフトが輸送のプラットフォームになっている可能性がある。また、阻害剤や変異体を用いた解析から、輸送の律速段階になる過程がわかりつつある。XYP1, XYP2と結合するタンパク質、脂質については今後も検討の余地があり、解析を進めていきたい。 サーモスペルミンとオーキシンの作用機構:サーモスペルミンの作用機構については、サーモスペルミンにより発現が抑制される遺伝子を見出すことができ、論文として成果を発表できた。これら遺伝子は、オーキシン誘導性のものであるため、サーモスペルミンとオーキシンの相反作用の収束点や分子機構に重要な知見を与えてくれる。また、サーモスペルミンの合成阻害剤の開発に成功し、様々な植物における作用を明らかにした。これまで、サーモスペルミン合成阻害剤は知られておらず、サーモスペルミンの作用機構を解析する重要なツールになると考えられる。 新奇シグナル分子の同定と機能解析:木部分化を顕著に抑制する化合物を見出すことができた。この化合物は細胞分裂を抑制する効果があるため、細胞分裂と木部形成との関係に重要な知見を与えてくれる。内生シグナル分子の単離と解析については、今後の課題である。 効率的な維管束分化系の開発:サーモスペルミン合成阻害剤とオーキシンを同時添加する木部誘導系を開発することに成功した。この実験系を用いて、様々な植物における木質誘導と、木部分化に関わる新規因子解明を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Xylogenの作用機構・輸送機構の解析:今後もXYP1-GFP, XYP2-GFPを用いた解析を進める。特に、阻害剤や変異体を用いて、輸送方向の制御機構、律速段階の解明を目指したい。Xylogenの輸送には、GPIアンカーによる脂質ラフトへの局在が重要であると考えられるので、脂質ラフトマーカーとの共局在と動態解析を進める。特に、xylogenの輸送に特化した脂質ラフトや輸送装置があるのか否かについて検討したい。Xylogen輸送変異体の単離と解析については、単離した変異体の表現型が次世代では明確でない場合や、xylogenの輸送特異的でないもの(一般的な代謝欠損や生育抑制などの変異体)が得られるため、解析が遅れている。今後は、維管束の表現型などにも着目し、変異体候補を絞り込みたい。XYP1, XYP2と結合するタンパク質については一定の目処がたちつつあり、今後も解析を進めていきたい。 サーモスペルミンとオーキシンの作用機構:サーモスペルミンとオーキシンの相反作用の収束点になる遺伝子群を明らかにすることができた。今後は、これらの遺伝子の中から、サーモスペルミンの作用に重要なものを絞り込み、その機能を明らかにしたい。そのために、サーモスペルミンの直接の標的であるSAC51転写因子の誘導株や、サーモスペルミン合成阻害剤が重要な知見を与えてくれる。 新奇シグナル分子の同定と機能解析:木部分化を顕著に抑制する化合物の作用解析から、細胞分裂と木部形成との関連を明らかにしていく。今後も化合物の探索と解析を進める。内生シグナル分子の解析については、精製法やアッセイ系を含めて今後も検討していきたい。 効率的な維管束分化系の開発:サーモスペルミン合成阻害剤とオーキシンを同時添加する木部誘導系の改良と様々な植物における利用を進める。この系を用いて、木部分化に関わる新規因子の単離を試みる。
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