研究課題/領域番号 |
25440141
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
溝口 剛 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (70281623)
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研究分担者 |
楢本 悟史 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30612022)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 概日時計 / 概日時計 / シロイヌナズナ / 光合成 / クロロフィル / 葉緑体 |
研究概要 |
本研究では、葉緑体内膜構造(特にグラナスタッキング)ダイナミクスのライブイメージング技術を確立して、光周期補償性メカニズム(光周期の違いによらずに、クロロフィル量及びクロロフィルa/b比が一定レベルに調節される機構)を解明することを目的としている。平成25年度は、次の2課題について、研究を行った。(課題1)葉緑体が巨大化する変異体背景(arc2、arc6など)でlhy;cca1変異による光周期依存的なグラナスタッキング数の変化を透過型電子顕微鏡により観察するために、lhy;cca1と葉緑体変異体との交配を行った。三重変異体の選抜を行い、顕微鏡観察を実施する予定である。(課題2)lhy;cca1変異による光周期依存的なグラナスタッキング数の変化を抑圧または増強する変異を同定するために、lhy;cca1変異体にEMS処理を行い、約25系統ごとに、M2種子プールを作成した。これらを恒明条件下で培養土上に播種して、植物体の葉の色が、lhy;cca1変異体の葉の濃緑色に比べて、淡いもしくは濃い変異体候補を多数選抜した。自家受粉により、各系統の次世代種子を収穫した。恒明条件/長日条件(16時間明期/8時間暗期)/短日条件(8時間明期/16時間暗期)の3種類の光周期条件下で、これらの種子を播種して、葉の緑色、花成時期、胚軸長、葉柄長を観察・測定した。恒明条件下において、野生型に比べて、lhy;cca1変異体の葉の緑色は濃く、花成時期は遅延して、杯軸長及び葉柄長が短縮することが分かっている。単離した候補系統の中で、10系統については、lhy;cca1変異体に比べて、葉の緑色は淡く、花成時期は野生型程度にはやくなり、杯軸長及び葉柄長も野生型程度まで回復した。以上の結果は、これら10系統は抑圧変異体の良い候補であり、本研究の良好な研究材料となることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、上記2課題に加えて、(課題3)葉緑体内膜構造ダイナミクスのライブイメージング技術の確立を行う予定であった。しかし、(課題1)に関する三重変異体の確立が遅れたことから、(課題2)に関する新規抑圧・増強変異体のスクリーニングに重点をおいて実施することとした。(課題3)の技術開発のためには、野生型よりも大きな葉緑体を有する変異系統を用いた条件検討が、使用予定の顕微鏡の解像度を考慮した際に有利と考えられる。平成26年度は、(課題3)を独立に進めつつ、(課題1)による三重変異体の選抜・確立を急ぎ進めたい。以上の結果から、(課題1)に関してはやや遅れており、(課題2)に関しては当初の計画以上に進展しており、(課題3)については遅れていると考えられる。以上のことから、計画全体としては、やや遅れていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、次の4課題について、研究を推進する予定である。(課題1)lhy;cca1と葉緑体変異体との交配似より得られたF2種子を播種して、三重変異体の選抜を行い、顕微鏡観察を実施する予定である。(課題2)単離した10系統の候補系統を用いて、lhy;cca1変異による光周期依存的なグラナスタッキング数の変化が実際に抑圧されるかどうかを確認する。さらに、(課題3)葉緑体内膜構造ダイナミクスのライブイメージング技術を確立する予定である。また、(課題4)課題3で確立する技術を用いて、課題1、2の変異体及びその比較対象植物の葉緑体内膜構造ダイナミクスのライブイメージを取得して比較解析する予定である。 本研究の実施により、①葉緑体などの内膜構造ダイナミクスの解析手法確立、②内膜構造ダイナミクス制御に関わる主要因子の同定とその作用メカニズムの理解、③光周期補償性の分子メカニズムの理解、④生命現象における恒常性機構の動作原理における共通性及び相違点の理解を目指していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(試薬類)に関して僅かに残額が出た。 上記は無理に使い切らず今年度の消耗品費と合わせて使用予定である。
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