昨年度、ESR1プロモーター::ルシフェラーゼ融合遺伝子を持つシロイヌナズナの培養組織に誘導アクティベーションタギングベクターを導入し、エストロゲン依存的にルシフェラーゼ活性が上昇するカルスを1系統得ていた。今年度初旬に同様のスクリーニングを続けて、さらにもう1系統、エストロゲン依存的にルシフェラーゼ活性が上昇したカルスを得た。これらのカルスにおけるT-DNAの挿入箇所をアダプター付加PCRにより同定した結果、IPT4遺伝子の翻訳開始コドンの約400bp上流とIPT8遺伝子の翻訳開始コドンの約700bp上流であった。これらの遺伝子はいずれもサイトカイニン合成酵素であるイソペンテニルトランスフェラーゼをコードしている。ESR1は、増殖中の培養細胞中でサイトカイニンの添加により発現が上昇することが我々の研究で明らかになっており、今回単離したエストロゲン依存的にESR1プロモーターを活性化するカルスは、サイトカイニン量の上昇によりESR1の発現を活性化したと推定される。 また、昨年度、酵母Split-Trp システムにより単離したESR1のESRモチーフに結合するタンパク質の候補遺伝子であるKIWIを大腸菌で発現させ、ESR1および、ESR2タンパク質との相互作用を調べた。精製したGST-KIWIタンパク質とMBP-ESR1及びMBP-ESR2タンパク質を試験管内で混合し、グルタチオンビーズ、あるいは、アミロースビーズを用いて共沈実験を行ったが、これらが物理的に相互作用するというデータは得られなかった。酵母から抗体を用いて共沈実験も行ったが、発現量が少ないためか、非特異的なバンドが多数検出され、明瞭なデータを得ることができなかった。KIWIとESR1の相互作用は、酵母細胞中の別のタンパク質を介していた可能性が考えられる。
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