研究課題
基盤研究(C)
シロイヌナズナ葉原基の発生過程でpri-miR165aに依存したMIR165Aの細胞非自律的な作用に関わる新奇因子の同定を目指して、本年度は以下の研究を推進した。遺伝学的アプローチによる新奇因子の同定のために、MIR165Aの機能領域を可視化するシロイヌナズナGFPレポーターライン、35S:miGFP-M mu-MIR165Aに変異原としてEMS処理を行った。変異処理した種子をM1世代とし、M2種子を用いて親株とは異なるGFPレポーターの発現様式を示す植物体の一次スクリーニングを行った。35S:miGFP-M mu-MIR165AではそのGFP蛍光は葉の裏側で観察される。これまでに、親株よりもGFPの発現領域が広がったものが5個体、GFPの発現が抑制されているものが2個体得られた。また、子葉や本葉の形状が親株と異なる、あるいは、葉序の異常を示す個体も多数得られた。このような形態異常はmiRNAの生合成・作用機構に関連する変異体や機能欠損株でも観察されるため、これら個体ではMIR165Aの細胞非自律的な作用に関わる因子が欠損していることが期待される。一次スクリーニングで得られた植物体は現在、生育中で、M3世代において二次スクリーニングを行う予定である。他方で生化学的なアプローチからの新奇因子の同定では、in vitro転写系で合成したpri-miR165aを利用したタンパク質精製カラムの作成を今年度の初頭に計画していた。最近の研究成果から、MIR165Aが葉原基で正確な細胞非自律的作用を示すにはpoly(A)を含む完全長pri-miR165aが必要であることを示唆する結果が得られた。そこで、当初の計画を変更し、タンパク質精製カラム作成に用いるための完全長pri-miR165aを得る方法を現在検討している。
3: やや遅れている
遺伝学的アプローチについては当初の計画通り、EMS変異原処理から一次スクリーニングの開始まで、順調に進んでいる。他方で、今年度途中で、MIR165Aの完全長転写産物がその正確な細胞非自律的作用に必要であることを示唆する新たな知見が得られた。この結果から、生化学的アプローチで同定を目指すpri-miR165a結合タンパク質を得るにはpoly(A)を含む完全長pri-miR165aが必要であることが考えられるため、当初の計画を見直す必要が出てきた。そのため、pri-miR165a結合タンパク質を精製するためのカラム作成が遅延しており、早急に解決策を検討する必要がある。
遺伝学的アプローチについては、今後も当初の計画通りに二次スクリーニングを進め、来年度中には次世代シーケンサーを用いた原因遺伝子の同定を開始する。また並行して、一次スクリーニングについても継続して行っていくことを予定している。生化学的アプローチについては、タンパク質精製カラム作成に用いるためのpoly(A)を含む完全長pri-miR165aを得る方法を検討するとともに、in vitro転写産物とDCL1やHYL1が結合するかどうかについて検討を進めていきたい。こうした検討について来年度前半までには結論を出し、生化学的アプローチの今後の方針を決定する予定である。
今年度途中で得られた研究成果から、一部の研究計画を再検討する必要に迫られた。そのため、当初計画していた試薬やキットの購入を見送ったため、未使用分の余剰助成金が生じた。次年度は、新たに得られた知見に基づいた研究計画の再検討に必要な試薬・キットの購入に今年度未使用分の助成金の一部を充て、その残額分と次年度に当初計画通りに配分される助成金をあわせて、次年度の研究計画で推進する実験に必要な試薬・キット・物品などの購入・支払いに割り当てる予定である。
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PLoS Genetics
巻: 9 ページ: e1003655
doi:10.1371/journal.pgen.1003655
Am. J. Bot.
巻: 100 ページ: 1116-1126
doi:10.3732/ajb.1200560