研究課題/領域番号 |
25440146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
山田 健志 基礎生物学研究所, 高次細胞機構研究部門, 助教 (00360339)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小胞体 / ERボディ / シロイヌナズナ / βグルコシダーゼ / 膜輸送体 / 植物・微生物相互作用 / オルガネラ / 金属イオン |
研究概要 |
ERボディはアブラナ科植物にみられる細長い形をした小胞体由来の構造物であり,シロイヌナズナにおいて幼植物体や根の表皮細胞に存在している.ERボディには抗菌物質を生産すると考えられるβグルコシダーゼが蓄積することから,病虫害に対する抵抗性を獲得するためのオルガネラであると考えられるが,このように小胞体が生体防御ためのタンパク質蓄積に関わるという例は他に知られておらず,小胞体からのERボディ形成を調べることで,小胞体の可塑性や機能転換を調べることが可能である.本年度は,ERボディの形成機構を明らかにするため,シロイヌナズナのERボディの主成分であるβグルコシダーゼ,PYK10や,ERボディタンパク質であるNAI2,膜タンパク質であるMEB1,MEB2に着目して研究を行った.シロイヌナズナにおいて,PYK10やNAI2が欠損するとERボディ形成が異常になるが,MEB1,MEB2のERボディ形成に関わる役割は不明であった.そこで,meb1 meb2二重変異体におけるERボディ形成を調べた.その結果,meb1 meb2二重変異体では,野生株と同じくERボディの形成にはほとんど変化がなかった.シロイヌナズナにはMEB1,MEB2と非常によく似た遺伝子,At4g27870が存在する.At4g27870がMEB1やMEB2と冗長的に働く可能性を考え,meb1 meb2二重変異体において,At4g27870の発現を抑えたmeb1 meb2 at4g27870ノックダウン三重変異体を作製し,ERボディの形成を調べた.その結果meb1 meb2 at4g27870ノックダウン三重変異体においてもERボディは正常に形成されることが明らかとなった.このことから,ERボディの膜タンパク質であるMEBはERボディの膜の形成には必須であるが,ERボディそのものの形作りには直接影響しないという結論を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では植物に特徴的な小胞体の可塑性の仕組みを明らかにすることを目的として,ERボディの形成と機能に関わる因子に着目し,これらの因子がどのように作用するか調べることを目標としている.これまでの研究からERボディ形成の因子としてNAI2 ,PYK10 ,ERボディ膜の形成に働くMEB1,MEB2を見いだすことができ,ERボディ形成の実態が明らかになりつつある.さらに,これらの因子の作用から,PYK10,NAI2が特徴的なERボディの形を作り出すことがわかりつつある.ERボディの膜タンパク質,MEB1,MEB2はERボディの形づくりにはあまり影響しないということも明らかとなり,近い将来にERボディ形成の仕組みが明らかになるという手応えを得ているため,順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,絞り込んだERボディ形成因子をアブラナ科以外の異種植物に導入し,その具体的な働き調べることなどにより,ERボディ形成の具体的な仕組みを解明するとともに,植物に特徴的な小胞体の可塑的な機能変換の発達の過程を明らかにする.さらに,ERボディ欠損変異株における表現型を細かく条件を設定して調べることで,ERボディの機能を見いだし,得られた成果を論文や学会発表によって発信していくことを考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,機器,試薬の供用などにより,当初の見込みよりも少ない金額で研究を行うことが可能であった.このため,次年度使用額が生じた. 次年度は高価な設備が必要な培養細胞を用いた解析を行う予定がある.また,成果発表のための経費などの研究費が必要と思われる.本年度未使用の研究費と合わせた次年度の研究費は,それらの経費として使用することを計画している.
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