研究課題/領域番号 |
25440147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
坂本 綾子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (00354960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 損傷乗り越え複製 / 環境応答 / ゲノム安定性 / 相同組換え / 熱ショック蛋白質 |
研究概要 |
損傷乗り越え複製は、DNA修復機構によって除去しきれなかったDNA損傷をバイパス複製することにより、DNA複製が停止するのを回避する機構の一つである。本研究では、損傷乗り越え型ポリメラーゼとDNA複製装置、熱ショック蛋白質(HSP)、相同組換え関連因子等との相互作用を生化学的・分子遺伝学的手法で解析することにより、高等植物がゲノムの安定性を脅かす様々なDNA損傷ストレスに対してどのように対処しているかを明らかにすることを目的としている。本年度は、既に入手している相同組換え検出マーカー、損傷乗り越えポリメラーゼ欠損植物、ならびにHSP90のノックダウン系統を交配することにより、試験系統を確立した。また、DNA複製関連因子と損傷乗り越え型ポリメラーゼとの相互作用を検証した。これに加え、PCNAのユビキチン化の効果を解析するためのコンストラクトを作製した。 1) 損傷乗り越え型ポリメラーゼの欠損株と3種類の相同組換え検出系統を交配し、得られたF2系統をPCR及び薬剤耐性によってスクリーニングすることにより、マーカーがホモで挿入されている試験系統を選抜した。 2) 2種のHSP90-RNAi系統とコントロール系統を相同組換え検出系統と交配し、PCR及び薬剤耐性試験によりRNAiコンストラクトと相同組換えマーカーがホモで挿入されている系統を選抜した。 3) AtPCNA2をtwo-hybrid実験用のベクターに組み込み、AtRev1およびAtPolHとのとの相互作用を解析した結果、AtPCNA2は酵母内でこれらのポリメラーゼと相互作用をすることが明らかになった。 4) AtPCNA2とユビキチンとの融合遺伝子をバイナリーベクターに組み込み、アグロバクテリウムに導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度の実施計画の通り、損傷乗り越え型ポリメラーゼの欠損系統、及びHSP90ノックダウン系統に相同組換え検出マーカーを導入し、試験系統を確立することに成功した。また、AtPCNAと損傷乗り越え複製型ポリメラーゼとの蛋白質間相互作用を検出することに成功した。これに加え、PCNAのユビキチン化状態の違いにより、DNA損傷応答に差があるかどうかを検証するためのコンストラクトを作出した。突然変異検出用の試験系統の一部はまだ選抜が完了していないが、それ以外は概ね計画通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は、前年度に確立した相同組換え検出系統を利用し、植物ゲノムの安定性維持において損傷乗り越え型ポリメラーゼや熱ショック蛋白質が果たす役割を解析する。また、PCNA-ユビキチン融合蛋白質導入植物を利用し、DNA複製因子の修飾が植物のDNA損傷応答においてどのような役割を果たしているのかを検証する。 1) 相同組換えマーカーを導入したHSP90ノックダウン系統およびコントロール系統に対して様々なDNA損傷刺激を与え、組織のGUS染色を行うことによって組換え頻度に差があるかどうかを解析する。また、植物にHSP阻害剤を与えた際に組換え頻度に差があるかどうかを解析する。 2) 野生型および損傷乗り越え型ポリメラーゼ欠損株、HSP90ノックダウン株に様々なDNA損傷刺激を与え、感受性の違いをroot bending assay等で解析するとともに、根の組織におけるプログラム細胞死を観察する。 3) 損傷乗り越え型ポリメラーゼの欠損系統に突然変異検出マーカーを導入し、試験系統を確立する。 4) PCNA-ユビキチン融合蛋白質を導入した植物を選抜し、植物の生育状況や環境応答、DNA損傷刺激に対する応答等に変化があるかどうかを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
植物のゲノム安定性を調べる目的で、当初、突然変異検出マーカー系統と相同組換え検出マーカー系統の選抜を平行して進めることを予定していたが、より検出感度の高い相同組換えマーカーを用いた検出系統の選抜を先行し、突然変異検出マーカー系統の選抜の一部はH26年度に行うことにしたため、突然変異検出系統の選抜のための実験試薬や植物育成資材を購入するための消耗品費を次年度に使用することにした。 H25年度に行わなかった突然変異検出マーカー系統の選抜試験をH26年度に行うため、これに必要な実験試薬や植物育成資材を購入する消耗品費に充てる予定である。
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