研究課題/領域番号 |
25440153
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
塩尻 信義 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70162568)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝臓構築 / 多様性 / 胆管 / ノッチシグナル / 硬骨魚 / 進化 / 肝幹細胞 / 脊椎動物 |
研究実績の概要 |
脊椎動物の肝臓構築は、門脈と肝内胆管の走行関係より、門脈並走型胆管または肝内分散型胆管を有する、大きく2タイプに分けることができる。無顎類および軟骨魚類の肝臓は門脈並走型胆管をもつが、条鰭魚の進化・多様化過程で門脈並走型から肝内分散型胆管への変化がおこる。また、哺乳類肝臓は門脈並走型胆管をもつが、その発生メカニズムとして、門脈間充織からでたJag1シグナルを隣接する肝芽細胞が受容することで胆管上皮細胞への誘導がおこるとされている。本年度は、肉鰭類ミナミアメリカハイギョ、オーストラリアハイギョ(写真提供のみ)、シーラカンス肝臓の組織構築について検討したところ、前2者は肝内分散型胆管をもつことがわかった。他方、シーラカンスは、門脈並走型胆管を有していた。条鰭類で肝臓構築が変化する分類群にあたると考えられるニシン目の肝臓の胆管(ウルメイワシ、キビナゴ)を調べたところ、肝内分散型であった。また、ゼブラフィッシュ肝臓の発生(受精後3~5日まで)を、サイトケラチン抗体を用い、免疫組織化学的に調べたところ、従来の報告とは異なり、これらの時期の肝臓内にサイトケラチン陽性の肝内胆管が発達することはなかった。アフリカツメガエルの変態過程で、胆管分布を含めた肝臓構築の再編がおこるか(特に、ハイギョ類の肝内分散型から哺乳類の門脈並走型胆管への転換に相当するような変化)調べたところ、変態前より肝内胆管は門脈に沿って分布し、変態前後で肝臓構築が大きく変わることはなかった。Jag1 cDNAの塩基配列について報告のある動物で、系統解析を行ったところ、両生類以上の動物と条鰭類の間で大きく異なっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肉鰭類、条鰭類の進化・多様化過程で門脈並走型胆管から肝内分散型胆管への変化が、アロワナ類、ウナギ類、ニシン類と、漸次的におこること、アフリカツメガエル変態過程では肝臓構築が大きく変化することはなく、門脈並走型胆管が発達すること、Jag1 cDNAの塩基配列の系統比較解析から両生類以上の動物と条鰭類の間で大きく異なっていることを明らかにし、本年度の目的は概ね達成できた。ゼブラフィッシュの肝臓発生をさらに詳細に解析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
脊椎動物における肝臓構築の多様性をさらに追求していくにあたり、肝内分散型胆管をもつクサフグ肝臓では、肝実質部内にductule構造が発達しているので、種々の動物群でductule構造の発達が、肝内胆管の分布様式とどのような関係にあるか、透過型ならびに走査型電子顕微鏡を用いて解析し整理する必要がある。頭索類(ナメクジウオ)から無顎類にかけて肝臓構築は顕著な変化を示すが、その間を埋めるホヤの肝膵臓の解析も行う必要がある。肝内分散型胆管をもつゼブラフィッシュの肝臓発生に加え、肝内分散型胆管と門脈並走型の中間型であるウナギの肝臓発生も材料が入手できれば解析する。平行して、脊椎動物におけるJag1-Notch2系をふくめ肝臓構築の分子メカニズムに関わる研究も最終年度に行う。また、門脈並走型胆管と肝内分散型胆管の生理学的な違いを意識することは重要で、各タイプ肝臓の代謝特性や胆汁組成などについても、情報収集していく。
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