脊椎動物の肝臓構築は、門脈と肝内胆管の走行関係より、門脈並走型胆管または肝内分散型胆管を有する、大きく2タイプに分けることができる。無顎類および軟骨魚類の肝臓は門脈並走型胆管をもつが、条鰭類の進化・多様化過程で門脈並走型から肝内分散型胆管への変化がおこる。また、哺乳類肝臓は門脈並走型胆管をもつが、その発生メカニズムとして、門脈間充織から発せられたJag1シグナルを隣接する肝芽細胞が受容することで胆管上皮細胞への誘導がおこるとされている。 頭索類(ナメクジウオ)から無顎類(ヌタウナギ)にかけて肝臓構築は顕著な変化を示すので、その間に位置するマボヤの肝膵臓を入手し組織学的に解析したところ、その肝臓は複雑な袋状を示し、一般に言う肝実質は形成されていなかった。次に、種々の動物群で肝内のductule構造の発達が、肝内胆管の分布様式とどのような関係にあるか、透過型ならびに走査型電子顕微鏡を用いて解析した。ductuleは免疫組織学的にはサイトケラチン強陽性であるが、透過電顕レベルでも、基底膜をもつductule上皮細胞から構成されることがわかった。あわせて門脈並走型胆管をもつ場合、あまりductule構造は肝内に発達しないが、独立型胆管をもつ場合はductule構造が発達することを確認した。また独立型胆管をもつ種の肝臓の類洞構造は穴開き型内皮から構成されており、これについては脊椎動物全体で共通性がある。胆管形成に関わるJag1ならびにNotch2のオルソログについて、情報を入手できる種のcDNAとタンパク質レベルでの系統解析を行ったところ、そのアミノ酸配列、mRNA配列は脊椎動物多種にわたって比較的保存されていることが確認された。また、胆管構築の変化とこれらの分子の配列変化はよく一致していることも明らかになった。
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