研究課題/領域番号 |
25440154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
徳元 俊伸 静岡大学, その他の研究科, 教授 (30273163)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ステロイド膜受容体 / 卵成熟 / 排卵 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
本研究は新規ステロイド膜受容体(mPR)を介したシグナル伝達の生理機能についての確証を得ること、さらにその反応が出発点となる排卵誘導に関わる遺伝子群を明らかにすることを目的とする。そこで本研究では近年確立されたTILLING法によりmPR分子の変異個体を作出し、その表現型の解析によりmPR分子の各種組織における生理機能の解明を目指す。また、申請者らの開発したインビボ卵成熟・排卵誘導法により排卵誘導した際に卵巣で引き起こされる遺伝子発現の変動を調べることで排卵誘導遺伝子を解明する。 メダカゲノムにはmPRの4種類の遺伝子が存在するが、これまでに3種類の遺伝子α,β,α-2の変異系統を得ていた。25年度は4種類目の遺伝子mPRγについて、HRMスクリーニングを実施し、4系統を選別し、アミノ酸置換となる変異体候補4系統を選択した。これらについてはF3系統のジェノタイピングまで系統樹立を進めた。2重、3重変異体についても交配を進めた。 mPRの機能解明についてはmPR安定発現培養細胞株にさらに改変ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞株を樹立し、ステロイドホルモン作用による細胞内cAMP濃度低下をリアルタイムに検出できる系を確立した。この細胞株の樹立によりmPRが抑制性Gタンパク質を介してステロイドホルモンの作用を伝達していることの確証を得た(論文投稿中)。 排卵誘導遺伝子群の解明についてはマイクロアレイ解析によりリストアップされた遺伝子群の内、発現変動の大きかった4種類についてリアルタイムPCR(主要設備)による発現解析を実施し、確かに排卵特異的な変化を示すことを検証した。解析試料については新たに自然条件化での変化であることを確かめるため、自然排卵群からの試料調製も行い、同様の遺伝子発現変動を示すことを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mPR遺伝子変異メダカ系統の樹立については掛け合わせ、ジェノタイピングによる遺伝子変異の確認と順調に進み、表現型解析に用いることができるF6世代以上までの継代は完了に近づいている。表現型が期待できる多重変異体の作出も開始し、計画通りにメンデルの遺伝法則に従い変異系統が得られている。 リアルタイムPCRを用いた排卵誘導遺伝子候補の検証についても、プライマーの設計において多少の問題があったものの計画通りの発現解析結果が得られている。この内容については自然排卵群の試料調製が最も困難であった。ゼブラフィッシュにおいては深夜に引き起こされるホルモン分泌やそれによる卵成熟・排卵のタイミングについては記載が無い。そこで、新たに排卵誘導のタイミングを調べて試料調製を行った。
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今後の研究の推進方策 |
脊椎動物間で保存されているmPRの3種類のサブタイプの内、mPRαとmPRβは比較的相同性が高く、これらには冗長性があると判断され、変異体の表現型を観察するためには多重変異体を作出する必要があると考えられる。実際にこれらを掛け合わせ、2重変異体を作出したが、表現型は見られなかった。メダカにおいてはさらにα遺伝子の重複遺伝子と考えられるmPRα-2遺伝子が存在するため、これらの3重変異体の作出が必要であると考えられる。今年度は3重変異体の系統樹立を開始した。また、最後の遺伝子であるmPRγについても変異系統を得たので、3重変異体にも変異が見られない場合は最終的に4重変異体の作出も試みる予定である。今後、何らかの変異形質が見られることを期待する。 排卵誘導遺伝子群については今後は転写因子群に候補を広げ、発現変動解析を実施する。変動が確認されれば鍵遺伝子を予測し、遺伝子変異魚の作出を開始する。新たな遺伝子変異個体の作出法であるTALEN法について導入準備を進めているところである。
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