平成27年度までに確立した基底膜イメージングモデルトランスジェニックマウス(Nid1-mCherry Tg)を用い、基底膜ライブイメージングにむけての評価と解析を行った。これらのマウスでは蛍光タンパク質mCherryを融合したNidogen-1(Nid1-mCherry)が発現しており、胚発生の初期から成体まで広範な組織の基底膜においてNid1-mCherryが集積して基底膜に蛍光が観察されることが確認されている。 本年度は、まずNid1-mCherry Tgマウスを用いて胎仔の顎下腺の器官培養系における基底膜のライブイメージングを試みた。摘出した顎下腺の上皮組織では基底膜の蛍光が認められたものの、間質組織におけるバックグラウンド蛍光が強いため、器官培養の条件下で基底膜の動態を継続的に観察するには不十分だと考えられた。そこで、その結果をふまえてマウス胎仔および成体組織において基底膜のライブイメージングに適した組織をさらに探索し、網膜の血管基底膜に着目して検討を行った。Nid1-mCherry Tgマウス網膜の毛細血管では、nid1-mCherryの蛍光が血管基底膜部位に明瞭に集積し、摘出した網膜のwhole-mount観察においてもバックグラウンドの低い状態で血管基底膜の蛍光が明瞭に観察されることが明らかとなった。マウスの網膜血管網は生後に発達することから、Nid1-mCherry Tgマウス網膜を用いることで生理的な血管新生における基底膜の変化について詳細な解析が可能になると期待される。さらに、網膜血管形成異常をともなう疾患モデルを用いることで、病的な血管リモデリングにおける基底膜の動態変化を解析し、疾患メカニズムの理解にもつながるものと期待される。前年度までの解析結果および今年度の成果をそれぞれ学術論文として報告する予定である。
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