研究課題
本研究は、基部陸上植物における葉緑体型ペプチドグリカン(PG)の存在を明らかにし、その機能を解明していくことを目的としている。26年度は以下の解析を行った。PGの存在については大幅な進展があった。2014年2月、PGの構成要素であるD-アラニル-D-アラニンをプローブに用いた実験系により、今までPGが見いだされていなかったクラミジアでPGが初めて見いだされた。これは、エチニル基を付加したD-アラニル-D-アラニンをPGに取り込ませた後に、エチニル基に蛍光物質をクリック反応で結合させる方法である。エチニル基を付加したD-アラニル-D-アラニンを合成し、ヒメツリガネゴケを同様の方法で観察したところ、通常の電子顕微鏡観察では観察できない葉緑体型PGの可視化に成功した。これは緑色植物の葉緑体における最初の葉緑体局在型PGの観察例である。その結果、ヒメツリガネゴケでは葉緑体の周り全てにPG層が存在していることを明らかにすることができた。これに加えて、以下の解析を行った。PBPと複合体を作ると予測されるタンパク質の解析については、タグを付加したPBPを発現するコケを新規に作成した。今後この形質転換ラインを用いて細胞内で結合するタンパク質を調べて行きたい。葉緑体型PGにおけるD-アミノ酸の異性化酵素に関する研究では、酵母でラセマーゼと予想されている YBL036Cのヒメツリガネゴケ相同遺伝子について遺伝子破壊実験を進めているが、葉緑体の巨大化の形質が見られず、YBL036Cとラセマーゼとの関連を考え直す必要がでてきている。
2: おおむね順調に進展している
PGに結合するタンパク質の解析やD-アラニンラセマーゼに関する研究については、まだ十分な成果が得られていないが、本年度はコケ植物の葉緑体に存在するPGを初めて可視化することに成功しており、PGの存在証明という点では順調に進展していると考えている。今後は、この可視化系を更に進展させたい。
研究申請時には発表されていなかった新規のPG可視化系は、植物の葉緑体におけるPGの可視化に大きく貢献できると考えている。そこで、最終年度は、この方法を用いた解析をメインの1つとして進めたい。まずは葉緑体PGが存在すると予想される灰色植物や車軸藻類を用いて同様の方法で葉緑体型PGの存在様式を明らかにしていく。緑藻類やシロイヌナズナには葉緑体型PGが存在しないと予測できるため、これらを用いたネガティブコントロールについても実験を進める。また、PGに結合するタンパク質の解析やD-アラニンラセマーゼに関する研究も同時に進めていきたい。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件)
Plos One
巻: 10 ページ: e0118804
10.1371/journal.pone.0118804