研究課題
本研究は、基部陸上植物における葉緑体型ペプチドグリカンの存在を明らかにし、その機能を解明していくことを目的としている。27年度は以下の解析を行った。ペプチドグリカンをエチニル基のついたD-アラニル-D-アラニンで代謝標識し、その後クリック反応を利用してエチニル基に蛍光物質を結合させることでペプチドグリカンを可視化する方法を用い、コケ植物の葉緑体がペプチドグリカンで覆われていることを発見した。一次共生植物には、緑色植物、紅色植物に加えて、ペプチドグリカンで覆われた葉緑体を持つことがわかっている灰色植物が存在している。今年度は、この方法を灰色植物シアノフォラに用い、この生物の葉緑体の周りに存在するペプチドグリカンの可視化に成功した。この方法を応用すれば、様々な葉緑体からペプチドグリカンを単離することが可能になるかもしれない。大腸菌ではペプチドグリカンの合成に必要なD-アラニンは、ラセマーゼによる異性化によりL-アラニンから生成される。D-アラニンを生成する酵素の候補として、酵母でラセマーゼと予想されているYBL036Cのヒメツリガネゴケ相同遺伝子2つについて、PpYBL036C-1/-2二重遺伝子破壊ラインを作成したところ、D-アラニル-D-アラニン合成酵素の遺伝子破壊ラインで見られる葉緑体の分裂阻害の形質は観察されなかった。このことは、YBL036C以外のタンパク質がアラニンの異性化に関係している可能性やラセマーゼ以外のバイパス経路によるD-アラニン生成の可能性を示している。また、ペプチドグリカン合成の最終ステップを司るペニシリン結合タンパク質と相互作用を示すタンパク質の単離や、SLHドメインを持つタンパク質の遺伝子破壊による機能解析等の実験も行った。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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