研究課題/領域番号 |
25440159
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50360508)
|
研究分担者 |
森山 俊介 北里大学, 水産学部, 教授 (50222352)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 内分泌 / 下垂体 / 視床下部 / 無顎類 / 生理現象 / ホルモン / 進化 |
研究概要 |
今から約5億年前に誕生した無顎類・ヌタウナギは、現存する最古の脊椎動物である。研究代表者らは、これまで、ヌタウナギ類の下垂体から生殖腺刺激ホルモン(GTH)を世界で初めて単離し、この動物の生殖内分泌現象の一端を明らかにしている。しかし、GTHを除く下垂体ホルモンや、下垂体機能の制御に関わる脳内・視床下部領域における内分泌因子については、未だに知見が乏しく、視床下部-下垂体の機能的な連関についても理解されていない。本研究は、ヌタウナギ類の視床下部-下垂体系を分子レベルで捉え、得られた成果を基盤として、ヌタウナギ類における繁殖、初期発生、成長・代謝制御機構を個体レベルで理解することを目的としている。 本年度は、上述した内分泌中枢器官ごとに発現する遺伝子群を網羅的に探索し、ホルモン関連分子の同定を進めた。まず、研究代表者が、連携研究者である東京大学大気海洋研究所の兵藤 晋氏と共同研究体制を構築し、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子探索を進行させるため、ヌタウナギ(Eptatretus burgeri)の視床下部と下垂体組織を30尾分採取した。各器官における網羅的な大規模シーケンス解析を、Roche社製の機器(GS Junior)を用いた。平均シーケンス長を400塩基対、総リード数約15万の解析を行い、現在、視床下部-下垂体組織での発現遺伝子のプロファイリングを行っている。 一方、未成熟個体の下垂体を固定標本とし、組織切片をヤツメウナギやサメ類の成長ホルモン(GH)に対する抗血清を用いた免疫組織化学的染色に供した。その結果、GTHを産生する細胞以外に、GHを産生する細胞が認められた。このことから、ヌタウナギの下垂体には、GTH以外に、少なくとも、GHを産生する細胞が存在する可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の実験の最大の目標は、ヌタウナギの視床下部と下垂体、それぞれの器官で発現する遺伝子群を網羅的に解析することであった。次世代シーケンス解析を進められた部分は順調と言えるが、大量のシーケンスを基盤に、その後の遺伝子群のプロファイリングに時間を費やし、予定していた目標を次年度に持ち越すこととなった。 しかし、遺伝子解析を進める一方で、下垂体組織の組織学的解析を進め、ヌタウナギの下垂体に成長ホルモン(GH)の存在を示すことができたことは、今後、GH遺伝子の同定を進めるうえで、大きな研究背景・根拠を得たと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ヌタウナギの下垂体と視床下部組織で発現する遺伝子プロファイルを早急に構築し、有顎類の視床下部で発現する生殖関連ペプチドや成長・代謝関連ペプチド下垂体で産生される成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンにターゲットを絞り、全長配列のクローニングを行うとともに、それらの内分泌因子の機能や相互的な機能連関を理解したい。例えば、これらの内分泌因子の発現部位をin situ hybridization法や免疫組織化学的な解析手法により明らかにするとともに、未成熟期(成長期)、成熟開始期、配偶子形成期等における発現動態をリアルタイムPCR法を取り入れて定量し、それらのホルモン分子の機能的な側面に迫りたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度、4月25日から4日間、研究材料の採取と共同研究者との研究打ち合わせのため出張をあらかじめ計画していた。そのため、大学内での基金交付予定期日までに使用することを想定し、次年度使用額を発生させた。 次年度、4月25日から4日間、研究材料の採取と共同研究者との研究打ち合わせのため旅費として使用する。(宮崎-新潟、4日間)
|