研究課題/領域番号 |
25440164
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
岩佐 達郎 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00133926)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 匂い分子結合タンパク質 / 化学感覚タンパク質 / 匂い分別 / レイリー波 / 表面弾性波 / SAWデバイス / 電子鼻 |
研究実績の概要 |
センサー素子タンパク質として利用することが期待される二種類の水溶性タンパク質について研究を進めた。オオクロアリの感覚子で発現している「化学感覚タンパク質」(CjapCSP7)を大腸菌で発現、精製する系を確立した。精製CjapCSP7の円偏光二色性(CD)スペクトルはαヘリックス構造に由来すると思われるシグナルを示し、また、蛍光色素1-NPNを結合することも分かった。さらに、CjapCSP7のリガンドを考えられるオオクロアリの体表に存在する炭化水素分子の一種、(Z)-9-Tricoseneと1-NPNが交換されることを示唆する結果を得た。CjapCSP7を凍結乾燥表品として提供できる系を確立できた。今後構造解析等の研究の進展に資することができると期待される。 イモリCpLip1については本来の二次構造を有し、蛍光色素結合能を持つ発現Cp-Lip1を得ることができた。また、分子内ジスルフィド結合還元に伴うCp-Lip1の二次構造には大きな変化のないことがわかり、Cys残基を改変してセンサーに固定化する方法をとることの可能性が開けた。 センサー部位については、レイリー型表面弾性波をもちいた液相系センサーの動作特性を調べた。波伝搬路上に溝ホルダーを設置することにより、試料ホルダーの容量を微量に抑え、レイリー波の減衰も抑えられ、微量な質量変化を測定することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
匂いセンサー素子候補タンパク質の化学分子結合特性の解明、改変に向けて、大腸菌での大量発現系が構築できた。また、遺伝子改変した素子候補タンパク質を作成し、その結合特性を明らかにすることもできた。これらの成果は日本味と匂い学会誌に発表した。 センサーデバイスについても、レイリー型表面弾性波をもちいた液相系センサーの動作特性を検討し、測定系での微量の質量変化を測定できることを明らかにした。この成果については表面科学誌に発表した。 最終年度にこれらを組み合わせたデバイスを作成し、匂いコードモデルを検討することができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、「生体機能指向性エレクトリックノーズを作製し、匂いコードモデルを検証する」ために、3項目の検討課題を挙げた。最初の課題である「Cp-Lip1を遺伝子改変した種々の「タンパク質匂いセンサー素子」の作製については十分に推進されている。CSPという新たなセンサー素子候補を得ることができ、これらの研究は、「化学分子受容体周辺で機能するタンパク質群」という新たな研究領域に広がりを見せている。第2番目の検討課題としてあげた「タンパク質匂いセンサー素子を持つエレクトリックノーズの作製」が遅れていたが、最終年度を前に準備が整ってきた。本年度はFETデバイスだけではなく、研究が進んできたSAWデバイスも用いて、エレクトリックノーズの作製と第3の課題である「ヒトの匂い感覚との対応」を解析し、匂いコードモデルの検討まで進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費が予想より少なかったこと、購入を計画していたアンプ類が期待される性能を満たす機種は高額すぎて購入できなかったことが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度にあたり、素子タンパク質の大量発現、精製、センサーデバイスの構築のために消耗品の使用が増えると予想されるので、これに使用する予定である。
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