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2014 年度 実施状況報告書

ペプチドによる神経回路修飾の動態を単一ニューロン~神経回路レベルで俯瞰する

研究課題

研究課題/領域番号 25440166
研究機関名古屋大学

研究代表者

阿部 秀樹  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (90396804)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード神経ペプチド / 神経修飾 / ライブセルイメージング / 共培養 / 視覚神経回路
研究実績の概要

脳内ペプチドの単一細胞レベルでの放出機構と、個体レベルで現れる持続的行動変化の間に隠れて研究が進んでいない、放出された神経ペプチドによる神経回路修飾の役割を探ることを目的として、生殖行動の動機づけに関わる終神経GnRH3ペプチド神経系を対象として以下の研究を行っている。
本年度は、昨年度樹立したキンギョ嗅球神経細胞と終神経GnRH3ニューロンの共培養系に、開口放出に応じて蛍光強度が変化する蛍光タンパク質を終神経GnRHニューロン特異的に発現させ、脱分極により誘起される局所開口放出の時間経過と分泌小胞移動速度の変化をライブセルイメージングにより観察・解析した。
また、終神経GnRH3ニューロン特異的に上述の開口放出に応じて蛍光強度が変化する蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックメダカの作製にも着手した。
さらにメダカにおける終神経GnRHニューロンの投射領域の一つである視蓋における単一ニューロンの視覚刺激応答特性についてin vivo実験系を立ち上げ、視蓋ニューロンの多くは視角で6~12度程度の大きさの受容野を持ち、その中に生じた運動に対して応答する様子を記録することができた。現在、この受容野構造に対するGnRHペプチドによる神経修飾作用の解析を試みようとしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

樹立したキンギョ嗅球神経細胞と終神経GnRH3ニューロンの共培養系に導入した蛍光タンパク質の蛍光強度変化が、同ニューロンからの開口放出を反映することを複数の方法を用いて検証し、現在論文投稿直前の段階になっている。また、この実験系を用いて複数の研究テーマが走り始めている。特に脱分極により誘起される分泌小胞移動速度に変化が生じることが示唆され、この結果は研究計画当初には予想していなかった新たなペプチド分泌制御機構に関する知見になる可能性がある。
メダカ視蓋単一ニューロンの視覚刺激応答特性に対するGnRHペプチドの修飾作用に関する研究は実験系を立ち上げることはできたが、個体サイズが小さいために安定して単一視蓋ニューロンから記録をとり続けることが困難で記録系の改良を行っている最中であるが、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

キンギョ嗅球神経細胞・終神経GnRH3ニューロン共培養系を用いた研究に関しては、終神経GnRHニューロンを電気的に興奮させる頻度・パターンを段階的に変化させ、その際に生じる開口放出センサータンパク質蛍光強度変化が細胞体、神経突起によってdifferentialな変化を示す様子を定量解析するとともに、様々なCa2+動員機構を特異的阻害剤によって阻害した結果、細胞内の領域ごとに開口放出に変化が生じるかどうかを解析する。さらに培養中のGnRHニューロンを賦活化させGnRH放出を促した結果、周囲の嗅球構成細胞からなる神経回路の神経活動に及ぼす影響を、Caイメージングを用いて解析する。
視覚系に対するGnRHペプチドの神経修飾作用を解析する研究については、単一視蓋ニューロンの受容野特性に関するデータをある程度蓄積した後に、同受容野構造がGnRHペプチドの脳内投与または終神経GnRHニューロンの電気刺激による賦活化によって変化するかどうかを解析する予定である。

次年度使用額が生じた理由

新たに作成を開始したトランスジェニックメダカがまだ樹立されておらず、機能解析実験に必要な機材、消耗品を購入していないため。また開口放出センサータンパク質遺伝子を導入した培養終神経GnRHニューロンを用いた開口放出の時空間変化の解析においても本年度はさほど消耗品に費用がかからなかったため。

次年度使用額の使用計画

トランスジェニックメダカ作製および機能解析にかかる分子生物学実験に必要な消耗品と、初代培養系に必要な培養試薬、イメージング実験などの生理学実験に必要な電極・Caインディケーターなどの蛍光試薬などの消耗品の購入に主として使用する。また、視覚生理実験系の改良、培養細胞を用いたCaイメージング実験を行うために必要な機材の購入費用の一部に使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Connections of the commissural nucleus of Cajal in the goldfish with special reference to the topographic organization of ascending visceral sensory pathways2015

    • 著者名/発表者名
      Uezono, S., Yamada, Y., Kato, T., Abe, H. and Yamamoto, N.
    • 雑誌名

      Journal of Comparative Neurology

      巻: 523 ページ: 209-225

    • DOI

      10.1002/cne.23675

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A neural mechanism underlying mating preferences for familiar individuals in medaka fish2014

    • 著者名/発表者名
      Okuyama, T., Yokoi, S., Abe, H., Isoe, Y., Suehiro, Y., Imada, H., Tanaka, M., Kawasaki, T., Yuba, S., Taniguchi, Y., Kamei, Y., Okubo, K., Shimada, A., Naruse, K., Takeda, H., Oka, Y., Kubo, T. and Takeuchi, H.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 343 ページ: 91-94

    • DOI

      10.1126/science.1244724

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intrinsic photosensitivity of deep brain photoreceptor2014

    • 著者名/発表者名
      Nakane, Y., Shimmura, T., Abe, H. and Yoshimura, T.
    • 雑誌名

      Current Biology

      巻: 24 ページ: R596-597

    • DOI

      10.1016/j.cub.2014.05.038

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Kiss1 neurons drastically change their firing activity in accordance with the reproductive state: insights from a seasonal breeder2014

    • 著者名/発表者名
      Hasebe, M., Kanda, S., Shimada, H., Akazome, Y., Abe, H. and Oka, Y.
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 155 ページ: 4868-4880

    • DOI

      10.1210/en.2014-1472

    • 査読あり
  • [学会発表] 繁殖行動を制御する脳内ペプチドニューロンによる神経修飾機構を探るためのキンギョ嗅球・終神経GnRHニューロンの共培養系2014

    • 著者名/発表者名
      志賀将雄・阿部秀樹・山本直之
    • 学会等名
      平成26年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      九州大学箱崎キャンパス
    • 年月日
      2014-09-19 – 2014-09-22
  • [学会発表] キンギョ培養終神経GnRH ニューロンに遺伝子導入した開口放出センサータンパク質2014

    • 著者名/発表者名
      志賀将雄・阿部秀樹
    • 学会等名
      日本動物学会85回大会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] Neuromodulatory effects of terminal nerve GnRH neurons in the fish visual system2014

    • 著者名/発表者名
      Umatani C, Abe H, Oka Y
    • 学会等名
      International Congress for Neuroethology
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2014-07-28 – 2014-08-01
  • [学会発表] A neural mechanism underlying mating preferences for familiar individuals in medaka fish2014

    • 著者名/発表者名
      Teruhiro Okuyama, Saori Yokoi, Hideki Abe, Yasuko Isoe, Yuji Suehiro, Haruka Imada, Minoru Tanaka, Takashi Kawasaki, Shunsuke Yuba, Yoshihito Taniguchi, Yasuhiro Kamei, Kataaki Okubo, Atsuko Shimada, Kiyoshi Naruse, Hiroyuki Takeda, Yoshitaka Oka, Takeo Kubo, Hideaki Takeuchi
    • 学会等名
      2nd Medaka Strategic Meeting
    • 発表場所
      Seville, Spain
    • 年月日
      2014-04-10 – 2014-04-12
  • [備考] 名古屋大学大学院生命農学研究科水圏動物学研究分野

    • URL

      http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~hikaku/

  • [備考] 水圏動物学研究分野神経生理学研究グループ(阿部)

    • URL

      https://lfbphysiol.wordpress.com

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公開日: 2016-05-27  

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