研究課題/領域番号 |
25440167
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 高廣 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50378535)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光受容 / オプシン / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
近年のゲノム解析の進展から、動物の光受容タンパク質であるオプシン類は様々なものが同定されているが、分子特性や生理機能などが明らかでないものも未だ多く存在する。その1つであるOpn5グループは脊椎動物において4つのサブグループに分類され、分子特性の解析を進めてきた。本年度は、脊椎動物以外の新口動物のゲノムに見いだされるOpn5グループのオプシンについて解析を行い、脊椎動物のOpn5の解析と比較を行った。 1.脊椎動物以外の新口動物のゲノムでは、頭索動物(ナメクジウオ)や棘皮動物(ウニ、ヒトデ)、半索動物(ギボシムシ)にOpn5遺伝子を見いだすことができた。これらのうち、全長cDNAを推測できたナメクジウオ、ウニ、ヒトデのOpn5はすべて11シス型レチナールを結合し紫外光感受性を示し、光受容後にGタンパク質を活性化した。これは、脊椎動物の4つのサブタイプのうち2つ(Opn5m、Opn5L2)と同じであった、この結果をOpn5の分子系統樹と併せて考察すると、新口動物のOpn5の祖先型は紫外光感受性であり、脊椎動物が持つ分子特性が異なるサブタイプ(Opn5L1、Opn5n)はそこから多様化したと考えられた。 2.脊椎動物の4つのOpn5サブタイプについて生体内での発現部位を確認したところ、網膜と脳内の一部にそれぞれ特徴的な分布を示すことがわかり、視覚以外の光受容機能に広く関わる可能性がある。また、脊椎動物以外では、バフンウニを用いて発現部位の解析を進めている。mRNAの発現をRT-PCRで確認したところ、成体の感覚器官と言われる管足に発現が見られた。また、成体以外でも、発生のある段階において発現することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの動物でオプシン類の遺伝子が同定されているものの、分子特性の解析が進んでいないものも多い。その原因は、生体内でのタンパク質の含有量が少なく、またリコンビナント体を作製することが困難なためであった。実際に、ウニやヒトデといった棘皮動物でにオプシン類が同定されているものの分子特性が明らかになったものはない。本研究でOpn5は棘皮動物で分子特性が明らかになった初めてのオプシンである。また、バフンウニの成体だけでなく発生段階でもOpn5が発現していることがわかり、その生理機能との関わりの多様性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1.バフンウニにおいて、成体及び発生段階の胚のどの部位に発現するのかをin situ hybridization法により確認する。 2.並行して進めている脊椎動物のOpn5の発現部位及び生理機能の解析と併せて、新口動物においてOpn5の分子特性と生理機能がどのように多様化し、また普遍性を残しているのか、明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会の参加が予定より1つ少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に国内学会に参加し、研究成果を発表する。
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