研究実績の概要 |
本年度は、研究代表者らが独自の研究により見出した新規抽出法を用いて、鳥類ニワトリの脳からペプチド画分の抽出を行い、網羅的解析を行った。 具体的には、脳の粗抽出液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分画し、それぞれのフラクションを高性能ハイブリッド型質量分析システム(Thermo Fisher Scientific製 LTQ Orbitrap XL)で測定した。検出したすべての多価イオンをMSMS解析したが、アミノ酸配列を決定するに至らなかった。その理由のひとつとして、サンプル中に含まれる物質の分子量が大きいもの(5386.76, 8564.65, 17721.73)が多かったためと考えられられる。そこで、HPLC分画をSDS PAGEにかけ、分子量8000付近にみられたバンドを切りだし、トリプシン消化をし、質量分析にかけたところ、既知タンパク質であることが分かった。 また、本新規抽出法により得られたニワトリ脳粗抽出液(1/50個体分)をナノ・キャピラリー・マイクロフロー高耐圧液体クロマトグラフィーシステムにかけたところ、多くの多価イオンが得られたが、現時点で新たな物質の発見に至っていない。 以上のことから、本新規抽出法を用いて得られるサンプルには、疎水性が高く、分子量の大きい物質が非常に多く含まれることが分かった。これらの構造を決定する方法のひとつとして、活性指標を用いず、網羅的にHPLC画分をSDS-PAGEにかけ、酵素消化することにより得られるアミノ酸配列をデータベース解析し、分泌シグナルの有無により新規生理活性物質の候補として同定していくことが最適であると考えた。現在、本方法を用いて、げっ歯類の白色脂肪組織から新規物質の同定を試みている。
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