初年度はまず、実験動物として使用するシリアンハムスターの脳内各種神経系を検出するための様々な抗体がシリアンハムスターと交差性を持つか否かを調べた。 脳内プロスタグランジン神経系の可視化には、プロスタグランジンの律速酵素であるcyclooxygenase 2 (Cox-2)に対する抗体を使った。この抗体のラットに対する交差性はすでにあきらかであったが、今回、シリアンハムスターにも交差性があることが判明した。これは、この実験にとって最重要点であり、このことにより当初の計画通りに研究を進めることが可能であることを示す。 免疫組織化学的手法によって検出したシリアンハムスターの脳内プロスタグランジン神経系の分布は、概ねラットの脳内分布と同様であった。すなわち、大脳皮質で6層構造を呈す新皮質では、Cox-2免疫陽性細胞は第3層に散在性に分布し、層構造の分化が十分でない梨状葉などにはより多数のCox-2免疫陽性細胞が観察された。また海馬では、歯状回に散在性に認められ、CA4領域には大型のCox-2免疫陽性細胞が観察された。 また、冬眠に関わることが示唆されている脳内オピオイド神経系の分布もほぼラットと同様であった。特に注目すべき点は、これら脳内オピオイドが冬眠を何らかの形でコントロールしていると目される視床下部に高密度に分布している点である。 冬眠に関わる神経系として今ひとつヒスタミン作動性神経系が示唆されているが、今後、市販のヒスタミン合成酵素に対する抗体のシリアンハムスターに対する交差性も検証し、冬眠との関わりを、プロスタグランジン神経系とともに、同時並行して明らかにする予定である。
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