研究課題/領域番号 |
25440174
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
山本 利春 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50111901)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロスタグランジン / 冬眠 / 神経細胞 |
研究実績の概要 |
26年度は寒冷下における脳内神経細胞の変化を調べた。プロスタグランジン合成経路の律速酵素であるcyclooxygenase 2 (Cox2)の免疫染色、その主要な受容体であるEP2, DP1の免疫染色、応答性神経細胞のマーカーであるpERKの免疫染色を行った。Cox2は特定の神経細胞に発現することが明らかになった。また、受容体に関してはDP1受容体は神経膠細胞にみられ、EP2は特定の神経細胞にみられることが分かった。特にEP2の免疫陽性構造は興味深く、神経細胞体のみならず微細な神経線維にまで発現していた。このことは神経細胞のプロスタグランジンに対する応答はEP2受容体を介して行われていることを示唆し、その受容性は広く脳内全域にわたることが考えられる。 しかしながら対照群と寒冷暴露群との間には、冬眠の誘導に関わるとされる大脳辺縁系、中隔核、視床下部などに、形態学的に著明な差は見られなかった。生化学的なデータの結果が待たれる。 26年度は小型哺乳類のみならず、変温動物の脳における寒冷化の影響を調べるための基礎データを集めた。その結果、爬虫類の脳内にもCox2免疫陽性細胞があることが明らかになった。その脳内分布は小型哺乳類とはかなり異なり、主に視床下部に多数存在することが分かった。この種差の理由は現在不明であるが、興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小型哺乳類(シリアンハムスター)の冬眠誘導が当初予想したよりも難しく、個体によって冬眠経過時間にばらつきが大きい。このため一定の標本数を集めることが困難であり、生化学的解析の壁になっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き小型哺乳類の冬眠各時期の個体数を集め、生化学的解析を進める。 これと並行して、変温動物の冬眠メカニズムの解明を進める。本年度の研究により、爬虫類の脳内にもCox2、EP2受容体免疫陽性細胞が存在することがわかっている。変温動物の場合、体温は外気温に依存するため、現在生化学的解析の壁になっている個体数を集めることが容易になるものと思われる。爬虫類の脳はもちろん哺乳類のものとは異なるが、その基本的構造は同じであり、本研究の注目領域である大脳辺縁系、中隔核、視床下部に該当する領域を含んでいる。よって爬虫類の脳の研究結果からでも、哺乳類におけるプロスタグランジン神経系の冬眠に果たす役割を類推することが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一次抗体(ビオチン化抗ウサギ抗体)の使用量が減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は当初計画よりも多数回の免疫染色を行い、消費する予定。
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