研究課題/領域番号 |
25440175
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
岡田 龍一 徳島文理大学, 薬学部, 研究員 (20423006)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 嗅覚記憶 / 学習 / 脳 / 昆虫 / 自発発火 |
研究概要 |
記憶・学習の神経メカニズムについて多くのことが明らかになってきが、学習訓練中(記憶が形成されている過程)に脳内にどのようなことが「起こっているか」を直接観察した例はほとんどない。そこで、本研究では記憶が形成される過程での神経メカニズムを解明するためのよいモデルになると期待される、ミツバチ脳の同定ニューロンであるPE1ニューロンを用いて記憶の形成過程の神経活動を電気生理学的に直接観察することを目的としている。今年度は、ミツバチで利用されている吻伸展反応を利用した匂い学習をしながら、同時にPE1の電気生理実験を行い、学習の成立時期と神経応答との相関を明らかにすることを目標とした。 電気生理実験と平行して、データ取得および解析のためのコンピュータプログラムをmatlabで自作した。自作したプログラムを使って、データを取得した全個体のスパイク列を、学習成立訓練を基準に、記憶形成前、形成直前、形成直後、形成後にわけてパワースペクトルを計算した。当初の仮説通り、記憶形成直前で神経発火の数が減少する傾向を見出した。しかし、プログラム作成に予想以上に時間がかかり当初予定していたデータの例数を確保できず、結論を得るまでには至らなかったため、次年度も実験の継続が必要である。 その一方で、執筆を担当した、行動学を志す学生やすでに行動学に従事している研究者に向けた行動学の総合辞典「行動生物学辞典」が出版され、動物行動学の啓蒙活動においては一定の成果を得たと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験の遂行には問題なかったが、コンピュータのプログラム作成に時間がかかった。当初は、神経スパイクの発火頻度をヒストグラムにしたデータを解析の対象にしていたが、神経スパイク列そのもの、いわゆる生データも対象にすべきという結論に達した。そのため、扱うデータ量が莫大なものになり、1回の試行で3000万点以上のサンプル点を扱わなければならなくなった。コンピュータや事前に用意した解析用プログラムではこのような大きなデータを十分には扱えなかったので、プログラムの改良が必要になった。加えて、データが大きいために計算時間が長くなり、プログラム作成中にプログラムの間違い(バグ)をチェックするためだけでも多くの時間が必要だった。
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今後の研究の推進方策 |
データ取得および解析用のプログラムが完成したので、次年度からは実験に専念できる。実験自体には問題らしい問題点は見当たらないので、遂行に障害はない。ただし、今年度プログラム作成に時間がとられ、予定したデータ数を取得できていないので、できるだけ、ルーチンワークには代表者が直接関わらないような環境を作り、予定していた研究計画に早く追いつきたい。今年度の遅れを取り戻すために資料整理やデータ処理のためのアルバイトを増やすなどする。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ取得および解析のためのプログラム作成に当初の予定以上に時間がかかったため、データ取得を目的とした実験が予定通りに進まなかった。そのため、資料整理、データ整理に必要と考えていた人件費および、予定していた情報収集のための旅費の一部が未使用となった。 データ取得と解析プログラムが完成しているので、次年度は予定通りの実験を行う予定である。前年度の遅れを取り戻すべく、当初予定したデータ整理と資料整理を増員し、人件費と情報収集のための旅費に使用するつもりである。
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