研究実績の概要 |
クラミドモナスは単細胞生の真核緑藻である。分子遺伝学や生化学の手法による研究に非常に適しており、光合成や鞭毛運動の研究において有用なモデル生物として用いられている。我々は、これまでに行った一連の研究で、クラミドモナスの時計遺伝子群を網羅的に同定し、クラミドモナスを時計遺伝子研究の新しい真核細胞モデル系として確立した(Matsuo et al. Genes. Dev, 2008, 22:918-30; Matsuo et al. Mol Cell Biol, 2006, 26:863-70; 松尾ら、蛋白質核酸酵素、2008、53:1873-80)。本研究では、クラミドモナスの時計遺伝子とその産物(時計タンパク質)の解析をさらに進めることで、真核生物の生物時計の分子基盤の理解を進めると共に、光合成生物が持つ生物時計の共通性と多様性の理解を深めることを目的とする。 27年度は、26年度に同定した新規遺伝子B16(仮名)の解析を中心に進めた。B16は時計タンパク質ROC15の光誘導性の分解に関わる因子として同定した。この遺伝子はほぼ全長がロイシンリッチリピートからなる蛋白質で、恒常的に細胞質に発現することを明らかにした。また、この遺伝子の変異体においては赤色光に対するROC15の分解誘導はほぼ完全に消失しているが、青色光に対する応答は正常であることを突き止めた。これらの結果から、B16はクラミドモナスにおいてこれまでほとんど知られていない赤色光受容伝達経路に関わることが示唆された。
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