研究概要 |
一般にトランスポゾンには保存的な自然選択が働かないため、同じ宿主の中で長い間転移活性を保って存続するのは難しいとされている。ところが我々はツメガエルの非自律型の(転移酵素をコードしていない)トランスポゾンT2-A1, T2-Cが、数千万年もの長期間にわたり転移活性を維持していることを見いだした。この事実は、これらの転移が何らかの形で宿主に有益だったために、純化選択によって転移活性が保存されてきたことを示唆している。本研究はこれを検証するために、T2-A1, T2-Cの転移反応を触媒する転移酵素を同定することを目的とする。T2-A1, T2-Cの転移に働く可能性のあるKol転移酵素には多数のサブタイプがあるため、まずはKol転移酵素とトランスポゾンの相互作用を試験管内で効率的にアッセイする方法の構築をめざした。 本年度はまず、T2-A1, T2-Cの転移に働く可能性のあるKol転移酵素の発現系の構築を行なった。Kol転移酵素遺伝子を複数の大腸菌発現用プラスミドベクターに組み込み、これを複数の大腸菌株に導入して、どのような条件で効率的にKol転移酵素が発現するかを検討した。またウサギ網状赤血球、コムギ胚芽、昆虫細胞由来の無細胞転写翻訳システムを用いたKol転移酵素の合成も試みた。現在までにタンパク質の発現系はほぼ構築できた。これは今後研究を進めて行く上での基盤となる成果である。 現在は、上記の合成した転移酵素を用いて、トランスポゾンとの相互作用を解析する系の構築を進めている。具体的には、転移酵素とトランスポゾン末端配列との結合をゲルシフトアッセイで調べる、あるいはプラスミドベクターに組み込んだトランスポゾンを転移酵素によって切り出す反応を調べる、等のアッセイ系の構築を進めている。
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