研究課題/領域番号 |
25440181
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
松尾 亮太 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (40334338)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNA増幅 / ニューロン / 倍数化 / 転写後調節 |
研究実績の概要 |
本年度は、ニューロンのゲノム倍数化に伴い、そこから転写されてできるRNA産物の量が、果たしてゲノムと同じように一様に増えているのか?という問題に取り組んだ。 ナメクジ等の軟体動物腹足類の脳では、成長に応じてニューロンのゲノムが一様に増幅することが知られている(Yamagishi et al. 2012)。この際、転写産物も一様に増えるのかどうかを知るためには、単一のニューロンでのRNA発現プロファイルを調べるか、あるいはまったく同じpopulationのニューロン群で発現する複数の遺伝子の発現量を調べることが必要である。 本年度、代表者らは偶然にも、ニューロペプチドをコードする2種類の遺伝子であるnuf (neuropeptide up-regulated in the fat slug)と、lyc (light-yellow cell peptide)が、右のparietal ganglioの同じニューロン集団で発現することを見出した。そして、nufのmRNAはナメクジの成長に伴って発現量が増加するのに対し、lycのmRNAは減少することを見出だした。これはつまり、倍数化したニューロンから発現する産物が、その種類によってそれぞれに異なる転写制御、あるいは転写後制御を受けていることを意味する。 引き続き現在、ナメクジの脳に存在する巨大ニューロンVGC (visceral giant cell)のみを用いたスクリーニングを行い、成長を促進したナメクジのVGCと抑制したナメクジのVGCとの間で、それぞれの細胞における相対発現量が大きく変化するような遺伝子産物がないかを探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニューロンに倍数化を引き起こす、神経投射先の臓器からのシグナル分子の同定については予定より遅れているものの、倍数化したニューロンにおける転写後調節機構の存在を示唆するデータが得られたことは幸運であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、東京大学新領域創成科学研究科・鈴木穣教授らの協力(新学術領域研究「ゲノム支援」、H26~)を得たので、VGCにおいて特徴的な発現変化を示す遺伝子の同定・解析の結果も含めた形で論文にまとめたい。特に、倍数化したひとつのニューロンにおいて、発現量が増加するもの、減少するものの両方が存在するらしいことが明らかになりつつある。この点について詳細な解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「物品費」および「その他」については、民間財団からの資金調達に成功したため、共通して使用できる物品について、そちらから賄うことができた。「旅費」および「謝金」については概ね計画通りの金額を使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であるH27年度は、海外での発表や論文投稿にかかる費用が見込まれるため、昨年度よりも支出額が増えることが見込まれる。
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