研究課題
本研究では、まず褐虫藻Symbiodinium minutum(クレードB1)のオルガネラゲノムにコードされた17個の遺伝子のRNA編集メカニズムが、温度及び紫外線照射ストレスなどによりどのように応答するのかを調べる。S. minutumのプラスチドゲノムの配列を連携研究者らと決定し、報告した(Mungpakdee et al. 2014)。その際にトランスクリプトームの解析も行い、通常の培養条件下でRNA編集を受けている471のサイトを同定し、報告した。またミトコンドリアゲノムの配列決定とそのトランスクリプトのRNA編集サイトに関する論文をまとめ、投稿した(Shoguchi et al., リバイス中)。以前は1種類と考えられていた褐虫藻は、現在では大きくAからIの9つのグループに分けられるほど多様であることが分かっている。クレードB1のオルガネラゲノムに加えて、クレードAやCのオルガネラゲノムの配列決定とそのRNA編集サイトの決定に必要なデータを次世代シーケンサーから得た。野外のサンゴAcropora digitiferaに共生している褐虫藻のオルガネラゲノムの多型パターンの解析に必要なデータを、共同研究者の協力により得た。さらにサンゴ幼生の存在下やサンゴ細胞内に共生した環境下においてオルガネラゲノム由来のトランスクリプトームのRNA編集に変化が起きていないのかを解析するためのデータを得た。
1: 当初の計画以上に進展している
環境の変化に対して、オルガネラゲノムやそのトランスクリプトームの発現にどのような変動がみられるのかを解析していく上で必要なゲノム情報基盤は整った。環境ストレス下においてRNA編集にどのような変化がおこるのかを解析中である。また長期培養下において、オルガネラゲノムやトランスプトに変化が起きているのかどうかをHiseqより得られたデータをもとに解析している。野外のサンゴAcropora digitiferaに共生している褐虫藻のオルガネラゲノムの多型のパターンの解析に関しては、他の研究者にも協力をおねがいすることを検討する。現在、サンゴ幼生と同時に培養することによりRNA編集が変化するのかどうかも解析しており、計画していた以上のデータが得られている状況である。
計画していた以上のデータが得られているので、今後はその解析を進めていくことが重要になってくる。解析結果をもとに、今年度中に論文を作成し、報告することを目指す。野外のサンゴAcropora digitiferaに共生している褐虫藻のオルガネラゲノムの多型のパターンの解析に関しては、共同研究者に協力をおねがいしつつ、解析をすすめていく。紫外線ストレス実験に関しては、クレードA、B、Cの各々で紫外線吸収物質の合成能が異なっていることを考慮し、Mass spectrometryによるマイコスポリン様アミノ酸産物量の変化をオルガネラのRNA発現変動とも比較していきたいと考えている。他の研究グループにより、同様のストレス実験下でどのような遺伝子の発現が変化するのかという報告がなされてきているので、その論文の結果とも比較しつつ、本研究における解析結果を理解し、論文として報告することをめざす。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Genome Biol. Evol.
巻: 6 ページ: 1408-1422
10.1093/gbe/evu109