生活環において安定な2核相の時代を有する菌類は子嚢菌類と担子菌類に分けられる。子嚢菌類は、その共通祖先より最も初期に分岐した系統群である古生子嚢菌類、出芽酵母で構成される半子嚢菌類、糸状菌類で構成される真正子嚢菌類の3系統群に分けられる。菌類の進化(ゲノム進化)の鍵を握っている古生子嚢菌類のゲノム情報は分裂酵母シゾサッカロミケスに限られている状況であった。そこで、古生子嚢菌類に属するサイトエラのゲノム塩基配列、網羅的転写物の塩基配列、およびヌクレオソーム形成領域由来DNA断片の塩基配列をゲノム支援のもと、決定した。これらの解析の結果、エキソン領域の平均GC含量は52.4%、イントロン領域の平均GC含量は48.0%であった。ヒストン8量体に巻き付いている領域の連続2塩基配列の出現頻度は、トリコスタチンA処理を行った細胞において、ほとんど変化せず、そのパターンが維持されていることがわかった。その出現頻度のパターンは系統進化的に近縁であるシゾサッカロミケスと大きく異なっており、系統進化的に離れた担子菌類であるミキシアに似ていることを明らかにした。シゾサッカロミケスのゲノムGC含量は36.1%、ミキシアのGC含量は55.5%であることより、ヌクレオソーム形成における塩基配列のパターンは生物種の系統進化よりもゲノム塩基組成に強く影響を受けると考えられた。
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