我々が新規に発見したほぼ全ての脊椎動物ゲノム中に共通に存在する唯一のフェロモン受容体遺伝子(ancV1Rと名付けた)の生理機能を明らかにし、魚から哺乳類まで共通の生殖認知システムの存在をつきとめることを目的として研究を進めている。これまでにancV1R遺伝子の発現がマウス、ヤギ、マーモセットに加えてネッタイツメガエルの鋤鼻上皮におけるin situハイブリダイゼーションによって確認されてきた。また、古代魚であるポリプテルスに関してはRT-PCRによって遺伝子発現を確認されていた。また遺伝子データベースの検索により鋤鼻器官の退化している霊長類、鯨類、コウモリ類だけでなく、ラッコ、海牛類、鳥類、ワニ類、カメ類においてancV1R遺伝子が偽遺伝子化していおり、ancV1Rの偽遺伝子化と鋤鼻器官の退化に強い相関関係があることが示唆されていた。本年度はCRISPR/Cas9システムを利用したancV1Rノックアウトマウスを作出することに成功し、現在ではancV1R遺伝子が欠失した系統を複数維持している。ancV1Rの欠失個体が作出されたことで、その機能解析が飛躍的進むことが期待される。
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