研究課題
脊椎動物の姉妹群である尾索類(ホヤとオタマボヤ)の発生におけるレチノイン酸の役割と,その進化過程を解明することを目指して研究を行った。ホヤ胚においては尾の付け根の筋肉でレチノイン酸合成酵素(Raldh2)が発現し,脳でレチノイン酸分解酵素(Cyp26)が発現する。この発現パターンは脊椎動物と似ているが,発現制御の仕組みは脊椎動物でも未解明である。本研究ではRaldh2とCyp26の上流配列を単離してレポーター解析を行った。上流配列の欠失解析によって,転写活性化に必要な数百~数十塩基対を特定した。最終年度にはRaldh2の発現活性化が転写因子Mespに依存することを示唆する結果を得た。ホヤ胚において最も強くレチノイン酸に応答する標的遺伝子の一つはリングフィンガータンパク質をコードしている。この遺伝子のホモログは複数の動物で同定されているが,機能や役割は未解明である。本研究では,Vivoモルフォリノなどを利用して機能阻害を試みた。最終年度にはニッカーゼ型Cas9を利用したゲノム編集の技術開発を行った。オタマボヤはホヤに近縁であるが,レチノイン酸合成酵素や受容体を持たない。Hox1遺伝子の発現パターンはホヤとオタマボヤで似ている。しかし,ホヤHox1の発現がレチノイン酸に依存するのに対し,オタマボヤHox1の発現はレチノイン酸を必要としない。本研究では,オタマボヤHox1の上流配列がホヤ胚の神経索で活性化することを突き止め,エンハンサー配列を数百塩基対程度に絞り込んだ。これと並行して,そのエンハンサーがそもそもオタマボヤ胚で正しく活性化するかどうかも調べた。オタマボヤでは遺伝子導入技術が未発達でレポーター解析の成功例もほとんどないが,研究協力者との共同研究で,オタマボヤHox1のレポーター遺伝子をオタマボヤ胚に導入しその発現を観察した。
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Nucleic Acids Research
巻: 44 ページ: D808-D818
10.1093/nar/gkv966