一部のシアノバクテリアは、グリコーゲンではなく、澱粉性の貯蔵多糖を生産する.その原因遺伝子として同定された、Cyanobacterium sp. CLg1 株由来 GlgX2 遺伝子を、前年度に Synechocystis sp. PCC 6803 株(グリコーゲン生産株)に導入した。この形質転換株における貯蔵多糖構造を解析した結果、ピーク鎖長は DP = 6 に認められ、親株(野生株)と同様のグリコーゲンであった。すなわち、この事例においては、単一の酵素遺伝子を発現させたのみでは、貯蔵多糖構造の変換は達成できないことが示された。 澱粉生産性シアノバクテリアとして窒素固定能を持つ Cyanothece sp. 8802、および窒素固定能を持たない株として前年度、本研究により新規に見出された Cyanobacterium sp. 10605 について、栄養欠乏条件下 (窒素、鉄、二酸化炭素) で培養を行い、多糖蓄積量の消長を調べた。窒素、鉄欠乏条件では一過的な澱粉蓄積の促進、二酸化炭素欠乏条件では澱粉合成の停止と蓄積量の漸減が認められ、これら現象は窒素固定能の有無に拠らないことが見出された。 シアノバクテリアにおける澱粉合成系の再構築を目指し、イネ由来澱粉合成酵素 (SSI)、枝作り酵素 (BEI) 遺伝子をシアノバクテリア Synechococcus sp. PCC 7942 株 (対応する内在遺伝子を欠損した変異株) に導入した。SSI、BEI 遺伝子の共存下、SSI の発現が認められず、一方 BEI の発現が (BEI を単独で導入した場合と比較して) 促進される現象が認められた。今後、遺伝子の導入法(プラスミドあるいは染色体への挿入)を変更することにより、両遺伝子の発現レベルの向上を試みる計画である。
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