昨年度に引き続き、GenBankで公開されている昆虫のゲノムプロジェクトデータを用い水平転移遺伝子の探索を試みた。これらの水平転移遺伝子の中でも、その由来が共生細菌となるものに注目している。そこで、共生細菌を保持する種、あるいは比較的近縁種に共生細菌を保持するものに着目して、解析を進めた。DNAなどが手に入る可能性があるものの中から、現時点では、ハエの仲間から1種、カイガラムシの仲間から1種、ウンカの仲間から2種、キジラミの仲間から1種、カメムシの仲間から4種を重点的に調べている。候補遺伝子は得られつつあるが、その同定までには至っていない。 問題点は、相同検索だけでは多数の候補が選択されてしまう点にある。長さの短いDNA断片や細菌ゲノムDNA由来の断片などの、コンタミ由来の塩基配列を除く仕組みを導入した。これによって検出候補がより妥当なものになった。今後は、このデータを元に、より網羅的な相同性検索や系統解析を行うことにより、水平転移遺伝子の同定とその進化について解析を進めていく。 また、先に示したように、共生細菌との関係が重要であり、ゲノムデータ中には共生細菌ゲノムが混入する場合もある。その場合はどのような結果が得られるかを、アブラムシゲノムで一部解析した。それに伴い、アブラムシの共生細菌のゲノム解析も行っており、アブラムシのある共生細菌ゲノムデータについて、その近縁な昆虫寄生性細菌との比較解析を行った。
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