平成27年度は9種のアンコウ目魚類と4種のフグ目魚類の解剖と観察を行うとともに、それぞれ6種と18種のレントゲン写真を撮影した。平成26年度に解剖と観察を行った6種類のアンコウ目魚類と4種類のフグ目魚類とあわせ、両目に共通する派生形質を検討した結果、10個の形質があることが確認した。これらのうち、眼下骨がないなどの3形質は、アンコウ目の化石種には見られない。したがって、これらは両目の単系統性を支持する形質と見なすことはできない。しかし、鼻骨がないなどの3形質は、両目が含められてきた側棘鰭上目と棘鰭上目の中でも稀な形質である。したがって、本研究ではアンコウ目とフグ目の近縁性は形態的にも支持されると判断した。形質間の極性の決定には、先行研究の情報の他、平成26年度に解剖と観察を行ったキンメダイ目やカンムリキンメダイ目などの5種の外群、および平成27年度に解剖と観察を行った9種の形態情報も参考にした。 平成25年度~平成27年度に得られた知見に基づき、上記4目の分類体系を検討した。本研究の結果、タラ目とマトウダイ目は近縁であり、さらにギンメダイ目とサケスズキ目と単系統群を形成することが判明した。さらに文献情報から、ステューレポルス科もこれらの4目の近縁性が示唆されているため、これら一群に側棘鰭上目の分類群名を適用するのが妥当と判断した。本研究ではアンコウ目とフグ目はヒシダイ科とも近縁と判断されたため、この3分類群を包括する単系統群にも分類群名を与えるべきであるが、近年の分子系統学的研究では、両群は多くの棘鰭上目魚類の中に包括されることが示唆されている。したがって、他の分類群との類縁関係が解明され、それらの分類体系も勘案しながらこれら3群からなる一群に分類名を与えるべきであり、本研究ではこの一群への分群名の提唱は行わないこととした。
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