研究課題/領域番号 |
25440198
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮本 敏澄 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (00343012)
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研究分担者 |
幸田 圭一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80322840)
重冨 顕吾 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20547202)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 積雪下 / 落葉 / 分解 / 菌類 / リグニン / 分子系統 / 酵素 |
研究実績の概要 |
北海道雨竜郡(北海道大学雨竜地方研究林)において、5月の融雪期に2013年秋に設置したミズナラ落葉のリターバッグを回収し、さらに積雪下の地表からカンバ、アカエゾマツ、ササ、トドマツ等の落葉を採集し菌の分離を行なった。また、もう一つの調査候補地であった長野県菅平(筑波大学菅平高原実験センタ-)においても5月の融雪期に積雪下の地表からミズナラ、カンバ、ササ、モミ属などの落葉を採集し菌の分離を行なった。これまでに各地で収集してきた積雪下の落葉分解菌を合わせると、国内の複数の多雪地域において積雪下の落葉分解に関与する菌類の菌株を収集することができた。 昨年度の12月および今年度5月に北海道雨竜郡で収集した菌について、0℃におけるリグニン分解酵素(phenoloxidase)の産生能を調べたところ、12月、5月いずれの落葉からも0℃でリグニン分解酵素の産生する菌類が存在することが明らかになった。このことから、積雪期の開始からリグニン分解に関与する菌類が落葉分解に関与している可能性が示された。積雪下の落葉に含まれるリグニンをメトキシル基含量とニトロベンゼン酸化法を併用した方法で定量したところ、リグニンは積雪期の初期より分解されている事が明らかにされたが、このことは分解初期よりリグニン分解菌が活動していることを示している。さらにこれらの菌類のDNA解析により、積雪下では複数種の担子菌類および子のう菌類が分解初期から落葉のリグニン分解に関与しており、種構成は時間の経過とともに変化していることが明らかにされつつある。また、それぞれの菌がリグニンペルオキシダーゼ,マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼなどの複数のリグニン分解酵素のいずれを産生しているのかについて明らかにするために必要な、菌の培養ー活性評価系が確立された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、1)日本各地の多雪地域における積雪下の落葉分解菌を多数収集することができた。2)これまで技術的に困難であった、菌が作用した落葉のリグニン含量、を正確に定量することが可能となった。3)菌の培養とリグニン分解酵素系を明らかにする技術を確立することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、国内で収集した全ての菌株について0℃におけるリグニン分解酵素の産生能を調べ、DNA解析によりその分子系統を明らかにする。また、これまでに確立された菌の培養ー活性評価系により、リグニンペルオキシダーゼ,マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼについて、これまでに収集した菌株がリグニン分解においてどのような酵素系を利用しているのか明らかにしてゆく。さらに、落葉にリグニン分解菌を接種、培養した後に分解量を定量すことで、菌の系統ごとのリグニン分解能力を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金に使用する目的であった予算が、主に分析作業のために計上されていたが、分析作業が予定よりも遅れた事による。
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次年度使用額の使用計画 |
分析技術、システムは既に確立されたので、今後は収集したサンプルを用いて順次分析作業を遂行するために使用する。
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