研究実績の概要 |
主に北海道と長野県において、5月の融雪期に積雪下の地表から収集した落葉から分離した菌株を菌叢形態によりグループ分けした後、代表菌株(合計170株)による0℃におけるプレート培地上でのリグニン分解酵素であるphenol oxidase (PO)の産生能を調べ、DNA塩基配列により98%の相同性を閾値としてOTUに区分した。その結果、POの産生能が認められた菌は36のOTUに区分された。各OTUについてデータベースから帰属する分類群の推定を試みた。子のう菌と担子菌のOTU数はそれぞれ23、13で子のう菌が比較的多く得られた。子のう菌は全てチャワンタケ亜門に属し18がズキンタケ綱、次いでクロイボタケ綱3、フンタマカビ綱1、不明1であった。ズキンタケ綱のうちビョウタケ目に属するものが最も多く14、次いでリティズマ目が3であった。担子菌は全てハラタケ亜門、ハラタケ綱に属し、ハラタケ目が8、アンズタケ目が4、アテリア目が1、サルノコシカケ目が1であった。 POの産生能が認められたOTUのなかから、子のう菌を4菌株、担子菌を1菌株、代表として選択し、23℃もしくは4℃条件下で45日間培養を行い、培養液に含まれる菌体外酵素活性を評価した。対象とした酵素はラッカーゼ(Lac)、リグニンペルオキシダーゼ(LiP)、マンガンペルオキシダーゼ(MnP)であり、それぞれABTS法、ベラトリルアルコール法、Mn(III)-酒石酸錯体の定量を用いた。その結果検討した菌の多くでLiP, MnP, Lac活性が認められ、リグニン分解はこれらの酵素によって達成されていると考えられた。次に4℃でラッカーゼの酵素活性評価をしたところ、1株において23℃で培養したブロスでは活性が低下したものの4℃で培養したブロスでは活性の上昇が認められた。この結果から低温で生育すると低温に至適温度を持つLacを生産する可能性が示唆された。
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