研究課題/領域番号 |
25440199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田中 和明 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (60431433)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 菌類 / 分類 / 系統 / 無性生殖 / 有性生殖 / 分類体系 / 命名規約 / 不完全菌類 |
研究概要 |
菌類は推定種数150万ともいわれる巨大生物群であり、広く活用されている有用微生物資源であるが、その分類・同定は分子ツールの利用が可能となった現在においても非常に難しい。なかでも子のう菌門に所属する菌界最大群の「クロイボタケ綱」(Dothideomycetes) は、その分類の困難さから基礎研究が立ち後れており自然な分類体系の確立には至っていない。本研究では、クロイボタケ綱について不完全菌類 (≒無性生殖時代) から見た分類体系の構築を試みた。 平成25年度は分類学的所属の不明な約300菌株について、nrDNA SSU・LSU領域の配列を決定し、塩基配列情報を基に系統推定を進めた。これらのうち約250菌株は、クロイボタケ綱に所属することが判明した。さらにマッサリナ亜目に所属することが示唆された108菌株について、rDNA-ITS領域やEF-1αの配列情報を取得し分子系統樹を作成するとともに、各菌の形態的特徴を精査した。その結果、従来6科が認められていた本系統群には、少なくとも3新科を追加すべきであることが判明した。これらの新科には、Periconia 型の不完全菌類が集中的に所属する系統群や、Dictyosporium 型不完全菌類により特徴づけられる系統群が含まれ、有性生殖時代よりもむしろ無性生殖時代の形態形質によってそれらの科を理解することが可能になると考えられた。 クロイボタケ綱内の2亜綱・10目・41科は、有性生殖時代の形態形質 (子実体、子のう、胞子など) により定義付けられている。しかし、上記の例でみられたように無性生殖時代の形質により明確に規定できるグループが存在することは、従来の菌類分類体系にほとんど考慮されてこなかった無性生殖時代が、分類学上重要な形質であり、さらには系統進化的にも意義があることを示唆していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、ほぼ当初の予定通りの菌株数について、菌類分類に有用な塩基配列の取得を行い、本研究に用いる菌株の選定を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は南西諸島における菌類(おもに不完全菌類)の採集調査を行い、本研究に用いる菌株の追加収集に重点を置く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に那覇・石垣・宮古島での菌類採集調査を予定していたが、他の研究プロジェクとの兼ね合いにより日程的に実施できなくなったため。 平成25年度に実施できなかった南西諸島での菌類採集調査を、平成26年度は調査人数を増員して実施する予定である。
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