研究課題
菌類分類学は新規命名規約 (二重命名法の撤廃 = 有性・無性生殖時代の統合化) によって新たな展開を迎えつつある。真の意味でこれに対応した分類体系を提案するため、菌界最大群のクロイボタケ綱について、不完全菌類(≒ 無性生殖時代)からみた新たな分類基盤の構築を目指した。平成26年度は、野外における菌類採集調査から、160株の純粋培養株を新たに得た。これらとは別に、形態データからは系統の把握ができていなかった約250菌株について、DNAを抽出するとともに、LSU rDNA 配列に基づく系統情報の推定を進めた。前年度に認められたマッサリナ亜目系統群の106菌株については、SSU, LSU, ITS rDNA, TEF1 の配列データに基づく分子系統解析と、形態データの比較から、1新科・9新属・21新種を見いだした。本菌群に所属するペリコニア科は、無性生殖時代の形態形質に基づき他科と明確に区別できることから、不完全菌類の系統学的有用性を示す好例であると考えられた。以上の結果は論文にまとめ投稿中である。各菌株の系統推定を進めるなかで、プレオマッサリア科に所属する不完全菌類が多数見いだされた。本科は従来、有性生殖世代の形態形質により定義づけられ、12属が認められていた菌群である。しかし、近年の分子系統解析から多系統群であることが指摘され、本科を構成する属について不明なままであった。本研究で新たに見いだされたプレオマッサリア科所属菌は、無性胞子の特徴に共通する形質が見られることから、不完全菌類の特徴に基づいた新たな科の定義を提案できる可能性があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、当初の予定どおりの菌株数について、28S rDNA の配列情報を取得し、系統の推定を進めることができた。
平成27年度は、ターゲットとするべき菌群について、28S rDNA 以外の配列情報を取得するとともに、形態形質を精査することで、不完全菌類がもつ形質情報の系統学的有用性を示したい。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (4件)
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