研究課題
菌類分類学は新規命名規約 (二重命名法の撤廃 = 有性・無性生殖時代の統合化) によって新たな展開を迎えつつある。真の意味でこれに対応した分類体系を提案するため、菌界最大群のクロイボタケ綱について、不完全菌類(≒ 無性生殖時代)からみた新たな分類基盤の構築を試みた。前年度までに認められたマッサリナ亜目系統群については、SSU, LSU, ITS rDNA, TEF1 の配列データに基づく分子系統解析と、形態データの比較から、最終的に2新科・10新属・29新種 (7種の新組合せを含む) を見いだし、正式に記載・命名した。本菌群に所属し、大部分が無性生殖時代の種からなるペリコニア科は、長い間人為的分類群であると見做され菌類の分類体系には用いられてこなかった系統群であるが、無性生殖時代の形態形質に基づき他科と明確に区別でき、分子系統的にも独立した系統群であることから、自然分類群としてあらためて認識すべきであることが本研究により提案された。同じく大部分が無性生殖時代の種からなるDictyosporium 類縁菌も、その無性生殖時代の形態的独自性から判断し、独立した系統群であることが見いだされた。これらの事例は、菌類分類体系を再構築するに当たって、不完全菌類の系統学的有用性を示す好例であると考えられた。各菌株の系統推定を進めるなかで、不完全菌類の Cryptocoryneum 属の7新種が見いだされた。本属は有性生殖時代が不明であったため、菌類分類体系に組み込まれておらず、長いこと系統不明な属とされてきたが、本研究によりクロイボタケ綱・ロフィオトレマ科に類縁することが初めて明らかとなった。しかし、無性生殖世代の形態的特徴が大きく異なることから、独立した系統群(新科)に所属する可能性が高いと考えられた。本菌群についても、不完全菌類の特徴に基づくことで新たな科の定義を提案できる可能性があると考えられた。
本研究による成果の一部については、webページ(近日立ち上げ予定)で公開する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Fungal Diversity
巻: 72 ページ: 1-197
10.1007/s13225-015-0324-y
Tetrahedron
巻: 71 ページ: 4788-4794
10.1016/j.tet.2015.05.044
Journal of Natural Products
巻: 78 ページ: 1505-1510
10.1021/np500924n
Mycologia
巻: 107 ページ: 845-862
10.3852/15-013
巻: 74 ページ: 143-197
10.1007/s13225-015-0352-7
巻: 74 ページ: 199-266
10.1007/s13225-015-0348-3
Studies in Mycology
巻: 82 ページ: 75-136
10.1016/j.simyco.2015.10.002
巻: 75 ページ: 27-274
10.1007/s13225-015-0346-5
IMA Fungus
巻: 6 ページ: 507-523
10.5598/imafungus.2015.06.02.14