研究課題
昆虫類を理解するには、その爆発的初期放散に直接由来した「多新翅類」は最も重要である。しかし、本類11目の類縁に関しては議論が定まることがない。本研究課題は、昆虫類を理解する上で重要な多新翅類の高次系統、グラウンドプランを比較発生学的アプローチにより検討するものである。本年度は、カワゲラ目、ゴキブリ目、シロアリ目、シロアリモドキ目、ジュズヒゲムシ目、ハサミムシ目に関して、比較発生学的検討を行った。1.カワゲラ目はキタカワゲラ亜目とミナミカワゲラ亜目からなり、日本には前者のみ生息する。キタカワゲラ亜目全 12 科のうち、日本に生息する 9 科すべてに関して、胚発生の概略を記載することができ、キタカワゲラ亜目の発生学的グラウンドプランを把握した。2.ゴキブリ目で最も原始的とされるムカシゴキブリ科の胚発生の概略を検討、記載をほぼ完了した。また、卵構造の厳密な比較検討から、網翅類(ゴキブリ目+シロアリ目+カマキリ目)の卵構造のグラウンドプランを議論した。3.シロアリ目の胚発生の概略を把握した。4.シロアリモドキ目の最原始系統群 Clothodidae のカルチャー構築に成功、その卵形態を記載した。5.ハサミムシ目の全 9 科のうち 8 科の比較発生学的研究を遂行、論文作成中。6.ジュズヒゲムシ目 3 種の卵形態の比較を行い、同目の卵形態のグラウンドプランを構築した。ジュズヒゲムシ目は、しばしばハサミムシ目、あるいは網翅類と近縁であるとされてきた。しかし、上記の項目 2 および 5 の成果との比較から、これは誤りであり、卵形態からは本目はシロアリモドキ目+ナナフシ目と類縁のあることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」に示したように、十分な成果が挙げられたものと評価できると思う。しかしながら、次のような反省点がある。1.シロアリモドキ目の最原始系統群 Clothodidae に関しては卵形態のみで、胚発生の検討にはまだ着手できていない。2.ハサミムシ目の比較発生に関しても、論文投稿までにはまだ時間が掛かりそうである。3.ゴキブリ目に関しても、ホラアナゴキブリ科の検討にはまだ着手できていない。一方、1.カワゲラ目に関しては、キタカワゲラ亜目の 9 科の比較発生に着手できたことは予想以上の進捗である。総合して、「区分」に示した評価となる。
データが纏まったテーマから、比較発生学的検討を行い、論文作成、投稿を行う。これとともに、本研究課題の最終年度に当たり、多新翅類全体の比較発生学的検討を通して本類のグラウンドプランおよび系統進化の再構築を議論、昆虫類の系統学に資する論考を行い、論文の作成を開始する。採択された筑波大学-ドイツ学術交流協会(DAAD)パートナーシッププログラムで本年度、イエナ大学のボイテル教授が一ヶ月間、私の研究室に滞在するので、共同して、多新翅類の比較発生マトリクスを作成、系統学的検討の飛躍的発展を目指す。前年度までに検討が完了しなかった課題については検討を継続することになるが、バッタ目に関してはまったく研究が進んでいないので、特に本目の検討に集中する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 9件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Arthropod Structure and Development
巻: 44 ページ: 42-68
巻: 44 ページ: 157-172
Journal of Morphology
巻: 276 ページ: 361-369
Arthropod Systematics and Phylogeny
巻: 73 ページ: 印刷中
Zoological Journal of the Linnean Society
巻: 174 ページ: 印刷中
巻: 72 ページ: 193-211
Zoomorphology
巻: 134 ページ: 79-91
DOI 0.1007a/s00435-014-0244- 5
Systematic Entomology
巻: 40 ページ: 357-364
DOI: 10.1111/syen.12107
Science
巻: 346 ページ: 763-767
DOI: 10.1126/science.1257570
http://www.sugadaira.tsukuba.ac.jp/machida/mushi.html