研究課題/領域番号 |
25440205
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
徳岡 徹 静岡大学, 理学部, 准教授 (90303792)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 種子 / 種皮 / 解剖学 / バラ類 / 初期進化 / ブドウ目 / クロッソソマ目 / ミツバウツギ科 |
研究実績の概要 |
本研究は被子植物の大部分を占める真正双子葉植物の進化の初期段階で、どのような形態進化が起きたのかを明らかにすることを最終目的としている。そのために、特にバラ類に着目し、バラ類が独自にもつ特徴、つまりその共有派生形質を見つけ出すことを目的としている。その第一段階として、バラ類の中の系統上重要な位置にあるブドウ目、クロッソソマ目、ハマビシ目、キントラノオ目から幾つかの植物を選び出し、その種皮の形態やその発生を詳しく調べることを計画した。本年度も前年度から継続して行っている、ブドウ科とミツバウツギ科の種皮の形態に関する研究のまとめを行った。 ブドウ科の研究では、静岡県内においてブドウ科3属5種の花の蕾から成熟した果実までの解剖学的特徴について調べた。その結果、胚珠が倒生すること、内珠皮と外珠皮が比較的薄い細胞層からなること、胚珠がパキカラザであることなどがわかった。しかし、成熟種子の種皮の構造とその発生の詳細がはっきりしないまま残された。 ミツバウツギ科の研究では2属3種の花および果実を採集し観察した。その結果、生殖器官の解剖学的特徴ではミツバウツギ科2属3種はほとんどの特徴で共通しており、クロッソソマ目の他の科とも共通していた。一方で、胞原細胞の数、珠心の側膜細胞の厚さ、種皮の維管束の発達、珠孔の長さ、珠心帽の形成の有無、種皮の構造について、変異が見られた。特に、珠心帽の形成はキブシ科と共通しており、重要な共有派生形質であることが示唆された。以上の結果を植物学会2015年度大会(新潟県新潟市)で発表した。また、論文にまとめPlant systematics and evolutionに投稿した(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度はブドウ科とミツバウツギ科の研究を継続した。研究結果をまとめて日本植物学会で発表を行ったほか、投稿論文にまとめた。 平成27年度までにブドウ科の研究では、静岡県内においてノブドウ、エビヅル、ヤマブドウ、ツタ、ヤブガラシの花の蕾から成熟した果実までの採集を行った。採集した材料の顕微鏡切片を作製し、その生殖器官の解剖学的特徴を調べた。その結果、胚珠が倒生すること、内珠皮と外珠皮が比較的薄い細胞層からなることが分かった。これらの特徴は他のバラ類植物にも見られ、共通していた。しかし、胚珠がパキカラザをもつことなどブドウ科独自に発達する構造などが見られたため、成熟種子までの種皮の詳細な発生の過程を明らかにすることができなかった。 ミツバウツギ科の研究では、静岡県内においてミツバウツギとゴンズイの花の蕾から成熟した果実の段階までを継続的に採集した。また、高知県と鹿児島県においてショウベンノキの若い花からやや成熟した花までの段階を採集した。採集した材料の顕微鏡切片を作製し、観察した。その結果、調べた3種で胚珠が倒生、胚のう形成が通常のタデ型、内珠皮が3細胞層、外珠皮が4細胞層であることで共通していた。しかし、成熟した種皮がミツバウツギで外種皮中層型であったのに対してショウベンノキにおいて外種皮中外層型であることがわかった。ミツバウツギ科と近縁なキブシ科では外種皮外層型であることから、種皮の構造はクロッソソマ目内の進化を考える上で非常に重要であることが示唆された。また、珠心帽の形成はキブシ科と共通しており、重要な共有派生形質であることが示唆された。ミツバウツギ科のこれらの研究を2015年度日本植物学会大会(新潟県新潟市)で発表した。また、これらの結果をまとめて投稿論文にまとめた。計画していたブドウ科およびミツバウツギ科の種皮を中心とした解剖学的研究を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28度はブドウ科の残りの形質に関しての観察を継続する。ブドウ科の胚珠はパキカラザであり、珠皮が成長の過程で痕跡的になっていた。適切な成長段階のサンプルを採集することとともに、途中の段階の詳細な観察を続けていく計画である。また、珠皮が非常に堅牢であるためパラフィン切片から樹脂切片に切り替えて、良好な切片を作製する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
バラ類ではじめに分岐すると考えられているブドウ目、ハマビシ目、クロッソソマ目を対象に、その種皮の形態進化を研究してきた。ブドウ目は特に系統上重要な位置にあるが、この科を研究する研究協力者(本学大学院生)が自身の都合で研究遂行ができなくなってしまった。ブドウ科の種子は非常に堅牢で、種皮の構造の観察のためには熟練が必要である。そのため、新たな研究協力者を育成してきたが、更なる時間が必要になってしまったため、次年度にも費用が必要になってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
ブドウ科の種皮の詳細な構造とその発生過程を調べるために、樹脂切片のための消耗品と試薬類に使用したい。また、ブドウ科植物の若い果実の材料が必要であり、採集するための旅費に使用する計画である。
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