研究課題/領域番号 |
25440207
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 実 京都大学, 理学研究科, 教授 (20227292)
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研究分担者 |
布施 静香 京都大学, 理学研究科, 助教 (30344386)
木場 英久 桜美林大学, 自然科学系, 准教授 (50221966)
遊川 知久 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, その他 (50280524)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 単子葉植物 / 分子系統解析 |
研究概要 |
近年、単子葉植物全体の分子系統解析は進み、目・科・代表的な属の系統関係については概ね見解の一致を見てきた。一方、種の系統関係については、一部の属を除き、まだこれから詳細な解析に入る段階である。本研究では、日本の植物のよりよい理解のために、最終的には日本産単子葉植物の種レベルの系統関係の解明を目指している。そして、この系統関係を軸にして、日本産単子葉植物の形態識別形質を再評価すると同時に、日本産単子葉植物の新しい検索表の作製を試みる。 平成25年度には、単子葉植物の中でも特に種数の多い科であるラン科、イネ科、カヤツリグサ科、ユリ科を中心に分子系統解析を可能な限り進めた。 現在のところ、ラン科においてはまず属レベルの解析を進めている。ムヨウラン属が分岐した後、チドリソウ亜科とラン亜科に分かれる。チドリソウ亜科の中では、ハクサンチドリ属、ネジバナ属、シュスラン属が順次分岐した後、カイロラン属・キヌラン属の群とハクウンラン属・キバナシュスラン属・アリドオシラン属の群に分かれる。ラン亜科の中では、(1)ガンセキラン属とエビネ属、(2)サイハイラン属とコケイラン属、(3)コイチヨウラン属とイチヨウラン属、(4)シュンラン属とメオトラン属、(5)クモキリソウ属とヤチラン属とヨウラクラン属、(6)フタバラン属とサカネラン属とキンラン属とカキラン属がそれぞれ近縁となる。 イネ科においては葉緑体ゲノムによる分子系統樹と核ゲノムによる分子系統樹の間に不一致がある。カヤツリグサ科においてはホタルイ属の分割が必要となっている。 ユリ科においては、チゴユリ属の分子系統解析の結果、まずチゴユリ・オオチゴユリの群とホウチャクソウ・キバナチゴユリの群に分かれた後、ホウチャクソウは種としてまとまらず、キバナチゴユリは南西日本のホウチャクソウと同一のグループを形成するという結果になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子系統解析のための塩基配列データを蓄積し始めたDNA領域は、分類群によって異なってはいるが、全体的に見ると、おおむね順調にデータを蓄積しつつある。 例えば、現在のところ、ラン科では葉緑体のmatK遺伝子領域と核のITS領域、イネ科では葉緑体のmatK遺伝子領域・rbcL遺伝子領域・psbA-trnH遺伝子間領域と核のITS領域、カヤツリグサ科では葉緑体のrbcL遺伝子領域・trnL-trnF遺伝子間領域と核のITS領域、ユリ科では葉緑体のtrnK遺伝子領域(matK遺伝子領域を含む)・trnL-trnF遺伝子間領域・atpB-rbcL遺伝子間領域のデータを蓄積しつつある。 つまり、現段階においては、データ蓄積を始めた全ての分類群において予定したDNA領域(trnK遺伝子領域・trnL-trnF遺伝子間領域・atpB-rbcL遺伝子間領域・psbA-trnH遺伝子間領域)のデータを蓄積できたわけではないが、その代わり、予定はしていなかったが、比較的近縁種間の解像度が高い場合が多い核のITS領域のデータをいくつかの分類群で蓄積しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成25年度に入手できなかった種の野外での採集を試みる。次に、その採集個体と平成25年度に既に入手している個体(乾燥葉)からDNAを抽出し、できるだけ長いDNA領域の塩基配列を決定し、現有データの全てを含めたDNAデータマトリックスを作製して解析を行い、分子系統樹を構築する。 その後、新しく構築した分子系統樹に従って、従来の形態識別形質を再評価する。従来の形態識別形質では種やその他の分類群をうまく識別できない場合、新しい識別形質を探索する。そして、最終的には、日本産単子葉植物の新しい検索表の作製を試みるつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に生じた次年度使用額は、木場英久氏への分担金からのもので、本来、主として木場氏のイネ科・カヤツリグサ科の収集のための旅費として計上していたものであるが、平成25年度に収集を予定していた植物が予想より木場氏の大学に近いフィールドから発見できたため、遠距離のフィールドの回数が減り、次年度使用額が生じることになった。 木場氏の平成25年度のイネ科・カヤツリグサ科の材料収集地は、大学の近辺に集中していたため、平成26年度には木場氏は逆に材料植物を収集するために遠方のフィールドに行く必要がある。そのため、木場氏の平成26年度の旅費を予定以上に計上する必要が生じたので、平成25年度に生じた次年度使用額を木場氏の平成26年度の旅費に充てる計画である。
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