水生植物,ヒルムシロ属のササバモとヒロハノエビモは近縁にもかかわらず,生態的に多様化している。植物ホルモン,アブシシン酸(ABA)溶液で栽培すると,両者はともに気孔をもつ陸生葉を形成し,陸上で生育できる。しかし,ABAが誘導される塩や低温ストレス栽培では,ササバモのみが陸生葉を形成した。ABA合成を律速する酵素遺伝子の発現は,ササバモは長期にわたり誘導されたが,ヒロハノエビモは一過的であった。このように,両種はともに陸生葉を形成する能力をもつが,ABAが関与するストレスへの応答の違いにより,それぞれ異なる生育環境,淡水から陸上と淡水から汽水域に適応している。
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